米、ファーウェイ圧力強化 企業秘密盗みの手口紹介も
対中ハイテク強硬譲らず 会社側は反論


トランプ米政権は13日、北朝鮮との取引を隠したり米企業の秘密を盗み出したりしたとして中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)を追起訴した。中国とは貿易交渉を巡る「第1段階の合意」が14日発効して制裁関税の一部を引き下げたが、その前日にファーウェイに追撃を仕掛けた。米政権がハイテク分野では中国に譲らない姿勢が一段と鮮明になった。
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イランは「A2」、北朝鮮は「A9」――。ニューヨークの裁判所に出した起訴状の詳細な記述からは、ファーウェイを指弾するために徹底的に捜査した米当局の執念がうかがえる。

起訴状によると、ファーウェイは2008年以降、米国が経済制裁を科す北朝鮮とひそかに取引した。社内文書では国名を暗号で呼んでいたほか、13年に卸業者に渡した指示書には「ファーウェイのロゴは出さないように」と念押ししていた。

経済制裁に抵触するのを恐れた金融機関は17年ごろ、ファーウェイとの取引を一方的に打ち切った。ファーウェイは他の金融機関に乗り換える際「前の金融機関はサービス水準が低いため自分たちから取引をやめた」と説明して回ったという。

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米企業から企業秘密を盗み出した罪でも手口を詳細に説明した。起訴状によると、ルーター機器を扱う米企業の従業員を引き抜き、ソフトの設計図にあたるソースコードの持ち出しを依頼した。

技術窃取を奨励する企業文化にも触れた。ファーウェイは13年、競合他社から秘密を盗んだ従業員の表彰制度を設けた。盗んだ情報を社内サイトに投稿するよう指示し、特に重要な情報は暗号化した。「競争管理グループ」と呼ぶ社内部門が毎月、最も価値のある情報を提供した従業員にボーナスを払っていた。半年に1回は部門を表彰する制度もあったという。

さらに隠蔽工作も巧みだった。例えばファーウェイ社内には「トップシークレット」と貼られた公式マニュアルがあり、外国当局者と接触する場合はファーウェイで働いていることを秘密にするよう念押ししていた。証拠を突きつけられた場合は「企業イメージが下がるのを防ぐため『愚かな末端社員』のせいにしていた」と指摘している。

目を引くのが、マフィアなど組織犯罪を取り締まるためにつくられた「RICO法」を適用したことだ。1999年ごろから長年にわたって不正な利益を取得した組織犯罪と認定した。「米企業から技術を盗み出し、世界で事業を拡大するために再投資した。ファーウェイが米国の技術を盗み出す取り組みは成功した」とまで断じている。

ファーウェイは「新しい起訴は、ファーウェイの風評と事業に打撃を与えようとする米司法省の試みの一つだ。根拠が無く不公正だ」とする声明を発表し、米司法省と争う姿勢を示した。米当局も「有罪が証明されるまで起訴内容は疑いだ」としている。

今回の追起訴には英国など次世代通信規格「5G」でファーウェイ製品の採用を探る国への警鐘を鳴らす意味もありそうだ。トランプ政権は19年1月に最初にファーウェイを起訴し、同年5月には禁輸措置の発動に踏み切った。商務省は一定基準を満たしたうえで外国で製造すれば制裁を回避できる現行規制に不満を抱いており、禁輸の強化を探っている。今回の起訴を受けて禁輸拡大に動けば、ハイテク分野の米中対立が一段と激しくなるのは必至だ。