中国の習近平指導部は「テロ対策」を名目に、ウイグル族に対する抑圧的な統治を強めている。

 国際社会の懸念が高まったのは昨年8月。国連人種差別撤廃委員会で、米人権活動家の委員が「中国のウイグル族ら数万人から100万人以上が新疆ウイグル自治区の再教育施設に強制収容されている」と指摘し、委員会は直ちに解放するよう中国政府に勧告した。
 中国はテロにつながる思想を取り除き、職探しのため技術習得を図るのが目的と説明。海外メディアに自治区の施設を公開し、強制的な収容も否定している。

 人権団体や元入所者らの指摘は異なる。施設内ではイスラム教の活動が禁止され、共産党の功績を学ぶよう強要。「足かせをして24時間立たせた」など拷問や死亡例も報告されている。

 自治区内の監視も徹底している。大量の警察官が街頭に立ち、店舗の出入り口では保安要員が手荷物を検査する。街中には無数の監視カメラが設置され、人工知能を使った顔認証で住民の行動を見張っている。

 米国は人権侵害を理由に、収容施設に関与した企業と個人に制裁を科す案を検討してきたが、米中貿易協議への影響を懸念して政府内の調整がつかず、制裁は実現していない。

2019/7/4
西日本新聞 国際面
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/524159/