以前掲載の「拝啓、安倍晋三様。『本当に中国の脅威を理解されていますか?』」で、財力で豪州政界に深く入り込み、政治的影響力を行使してきた中国人実業家の永住権を剥奪、中国共産党が仕掛ける浸透工作に断固とした拒絶姿勢を示す豪州の例を紹介した、AJCN Inc.代表で公益財団法人モラロジー研究所研究員の山岡鉄秀さん。しかし中国の攻勢は止んでいなかったようです。山岡さんは今回、無料メルマガ『日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信』でその実態を明かすとともに、日本も豪州以上に危険な状態にあると警鐘を鳴らしています。
止まらない静かなる侵略−本当に危ないのはどの国か?
全世界のアメ通読者の皆様、山岡鉄秀です。

先日、ある討論番組に出演し、次のように主張しました。

「移民政策は安全保障に直結していることを忘れてはならない。移民や留学生をフルに活用して世界中で浸透工作を行っている国があるからだ」



すると、元高級官僚の方がこう言いました。

「中国が悪いと言ったら、アメリカだって悪い。原爆や大空襲、それに、日本政府に色々言ってくる」

善悪二元論で言ったら、世界中悪い国だらけではないでしょうか?また、ひとつの国にも良い面と悪い面があります。

今、我々に求められているのは、善悪の判断というよりも、どの陣営に付いたら生き残ることができるか、という冷徹な判断です。今の日本の国力では単独で中立を保つことは不可能です。

オーストラリアから衝撃的なニュースが飛び込んできました。

メルボルン拠点の主要紙「ジ・エイジ」シドニー拠点の「シドニー・モーニングヘラルド」、そして国営放送ABCが協力して調査し、作成した「中国のオーストラリアにおける浸透工作」に関するドキュメンタリーが放映されたというのです(Interference China’s covert political influence campaign in Australia Four Corners)。

昨年、危機感から外国干渉防止法を可決したオーストラリア。今年に入ってからは、政界工作を行っていた中国人富豪の永住権をはく奪し、市民権申請も却下しました。やっと目覚めたかに見えたオーストラリア。

しかし、ドキュメンタリーを見て背筋が凍りました。中国共産党による大規模で組織的なオーストラリア浸透工作はまったく止んでいなかったのです。

トニー・アボット元首相が、オーストラリアのインテリジェンス機関(ASIO)の警告を無視して中国人富豪グループに自由党への寄付を促していたことも暴露されました。



全豪に本国共産党に通じる監視ネットワークが張り巡らされ、共産党に批判的な中国人や団体は攻撃され、協力的な中国人や団体は支援されることがつまびらかになりました。



中国総領事館が直接地方自治体に圧力をかけてくるケースも暴露されました。危機感を感じたタンブル前首相は、中国関連アドバイザーのジョン・ガーナウト氏に極秘調査を命じました。



すると、彼の調査に協力する中国人学者は中国当局にマークされ、中国に入国するや否や連行されて尋問を受けてしまうのです。

2018年3月、オーストラリアに帰化した中国人作家ヤン・ヘンジュン氏は、シドニーでガーナウト氏に会いに行く途中、中国政府からの電話で足を止められました。電話の主はガーナウト氏について根掘り葉掘り質問し、ヘンジュン氏は約束の時間に1時間も遅れてしまいました。

元中国政府の情報機関に勤務していたヘンジュン氏は、中国共産党に批判的になったことから解雇された経歴の持ち主で、ガーナウト氏に貴重な内部情報を提供しました。



ガーナウト氏はヘンジュン氏に、絶対に中国本土に行かないように警告しました。逮捕される危険性が高いと判断したからです。

しかし、ヘンジュン氏はそのアドバイスを無視して2019年1月に中国へ奥さんと娘を連れて渡ってしまいます。

案の定、税関では中国政府の職員が10人ほど待ち受けていました。ヘンジュン氏は家族と引き離され、連行されたまま消息不明になっています。残された家族も出国を禁じられたまま、未だにヘンジュン氏の安否も知らされていません。

ガーナウト氏はヘンジュン氏が精神的拷問を受けているのではないかと危惧しています。

ニュージーランド、カンタベリー大学のアンマリー・ブレイディ教授は、2017年にニュージーランドにおける中国の浸透工作を暴く衝撃的なレポートを発表し、現在も調査を続けています。

そして今年、オーストラリアの国会で証言をすることになっていた前日、彼女の家は泥棒に荒らされてしまいます。現金などには一切手を付けず、情報のみを盗んでいったとのことでした。この犯行にも、中国政府の関与が強く疑われています。

このように、オーストラリアやニュージーランドでは、中国共産党による浸透工作はもはや公然の秘密になっています。

さて、ここからが本当の問題です。

開かれた移民国家であるがゆえに、その制度を徹底的に利用されて幅広い浸透工作を許してしまったオーストラリアとニュージーランド。



圧倒的なマネーと人海戦術に押しまくられ、まだ自国防衛の戦いに勝利していません。心配な状況が続きます。しかし、やっと現状に気づき、法律の整備や汚職政治家の解任、問題人物の追放も行いました。


一方、これまで、西側先進国では最も閉ざされていた日本はそこまで浸食されていないように見えます。



しかし、実際には全く同じことがなされている、という情報があります。

全く同じことが進行しているが、自浄能力が無いために、表ざたにもならないというのです。

最近の日本政府の動きを見ていれば、その可能性は十分高いと言えます。



猛攻撃を受けたが、現実に目覚め、警戒感を強めるオーストラリアとニュージーランド。表面的には何も見えず、スパイ防止法もなく、政治家の癒着も追及されない日本。

本当に危ないのはどちらでしょうか?

「中国が悪いならアメリカも悪い」と言っている場合でしょうか?我々日本人はすでに「ゆでガエル」なのかもしれません。


2019.04.19 『日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信』
https://www.mag2.com/p/news/395310/3