(CNN) この2年、中国西部の新疆ウイグル自治区から、イスラム教徒が多数派を占めるウイグル族の大量拘束に関する報道が徐々に伝わってくるようになった。

こうした報道が積み重なり、悪夢のような大規模収容キャンプや人工知能(AI)監視システムの輪郭が見えてきた。ウイグル族は中央アジアに住む1100万人近い民族集団で、自分たちのことを「破壊された民族」と形容している。

中国当局はウイグル人社会の再編を目指すプロジェクトについて、宗教的「過激主義」とテロの脅威への対応と位置づける。報道の自由がない中、ウイグル族による襲撃の情報は、国家統制への抵抗という実態から離れて大きく報じられてきた。

研究者のエイドリアン・ゼンツ氏と国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチによると、拘束中のウイグル人は最大で100万人に上るとみられている。一方、中国当局は、キャンプが拘束施設であることを否定。生徒が喜んで参加する「職業訓練センター」だと主張する。

キャンプをめぐる憤りの声が世界で強まる陰で、ウイグル族の家庭には100万人以上の政府職員が派遣され、抵抗の動きを監視・調査している。その大半を占めるのは、中国の多数派民族である漢族だ。

こうした「親戚」(職員は自分たちのことをそう呼ぶように訓練されている)は、ウイグル族を完全に同化させる試みの一端を担い、宗教や言語、家族構造、食文化といった基盤を掘り崩そうとしている。


国営メディアの報道は、こうした家庭訪問のシステムについて「民族の統一性を強化」するものだと説明。共産党員とウイグル族が一緒に笑顔でポーズを取っている写真も添えられていた。

今年4月に新疆を訪れた際、私はこうした漢族の公務員に数多く出会い、自分たちの仕事とそれに関する見解を聞いた。

調査の結果、「親戚」には2つの主要任務が与えられていることが分かった。1つ目は事実確認で、宗教的・民族的ナショナリズムの考えを持っているかを見破る役割だ。また、収容された家族に対してウイグル人が抱く愛情の把握も任務に含まれている。

カシュガル地区の「親戚」が使うマニュアルでは、敏感な問題についてはウイグル族の子どもに聞くよう推奨している。「子どもは真実を語る」ためだ。この過程で得た情報は治安関係のデジタルシステムに入力され、当局上層部がキャンプに送り込む対象者を決定する。

「親戚」にとっての2つ目の優先課題は、ウイグル族に対する「温かみを示す」ことだ。

米軍が「テロとの戦い」の最初の10年でアフガニスタン人やイラク人の「心をつかむ」ことを試みたのと同様、このアプローチの主眼は、ウイグル族の境遇に共感を示し、生活向上につながる質問をすることにある。

もちろん、心のケアに不明者や拘束者への共感は含まれない。カシュガル地区のマニュアルでは、こうした共感をしないように警告。ウイグル族の家庭に共感して「洗脳」されることのないように注意を促している。

私が話を聞いた公務員の大半にとって、自分たちが生活や家族を破壊しているウイグル族の立場になって考えることは難しいようだった。彼らの言う「新疆問題」の解決策を探るうえで、この種の暴力的父権主義が必須だと捉えていたのである。

中華民族国家というプロジェクトを推進するためには、ウイグル族の生活を支配することが唯一の方法だと多くの人が考えていた。

英国人作家のジョージ・オーウェルによれば、支配の必要性を信じ込んだとき、人は他人から敬意がないことに敏感になる。支配は好意的に受け止められなければならない。そのような国では、「行為の良し悪しは、それ自体の評価ではなく、誰がその行為をしたのかで判断されるようになる」。

このような状況下では、裁判を経ない収容や子どもの移送、マイノリティー(少数派)の家庭の占拠といった行為も、正常で必要なことと見なされる。

ウイグル族の再教育にかかわる漢族市民の多く、特に最近新疆に来た人は、宗教色のない漢族ナショナリズムの構築に自分たちは参加しているのだと語る。こうした動機に加え、中国指導層による全体主義的な統制もあいまって、収容キャンプの倫理性について尋ねるのは一層難しいものとなった。

最終的には、この痛ましくも凡庸なプロセスがウイグル族やカザフ族の利益になる――。彼らとしては、そういう言い方のほうがしやすいようだった。このプロセスを通じ、新疆が漢族にとって世俗的で安全に場所になるということだろう。

多くの「親戚」は、イスラム教徒の再教育に自分の時間とエネルギーを犠牲にしているとの認識で、その結果ウイグル族やカザフ族の「小さなきょうだい」から好意的に受け入れられる未来が来ると信じていた。イスラム教徒の隣人の視点から自分たちの行為の影響を捉えることは不可能だった。

ドイツ出身のユダヤ人哲学者、ハンナ・アーレントが数十年前に他の国であった大規模弾圧のシステムについて観察したように、ウイグル族の自由が制限された状況は権力を持つ側が「職務をこなした」結果だ。漢族の「親戚」が自分たちの行為に向き合う日が来るまで、国家主導の人間構築プロジェクトへの抵抗について考えを巡らす日はこないのだろう。

2018.12.01 CNN
https://www.cnn.co.jp/world/35129485-4.html