チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世(83)が20日、国会内で講演し、「われわれはチベットの独立は求めていない。中国憲法に基づいたすべての権利が与えられるべきだ」などと述べた。講演の要旨は次の通り。
 「中国がチベットに侵攻してきて以来、約70年の月日がたちました。その間に中国共産党のハードライナー(強硬な人)は、いろんな方法で、私たちチベット人を抑圧し、殺戮(さつりく)し、洗脳し、お金も使うことによってチベット人の精神を抹殺しようと努力してきた。しかしながら、私たちチベット人の精神は抑圧されればされるほど、ますます高まってきた」


 「(インドに亡命した)1959年以前の段階において、些細(ささい)な問題は除いて、チベット族と漢族の間に何らかの問題があったということはありませんでした。しかし、その後、彼ら(漢族)の行動によって私たちチベット人に悪い印象を与えることが起きてしまった。そしてそのような状況下において、漢族とチベット族の間に多少の亀裂が生じることになりました」

 「政府のオフィスなどで働いている人たちの間にも漢族とチベット族という違いが常に強調されました。学校のような組織の中でも同じです。そして商店などでも、漢族、チベット族という違いが常に強調されるようになってしまった」

「中国の方は、調和のとれた世界、統合的な社会を構築するというスローガンを掲げてきたが、実際にはそのような状況になりませんでした。1974年以降、私たちはチベット独立は求めておりません。歴史的にはもちろん私たちの国チベットは独立国であったわけですが、実際の状況などを考え合わせ、あまり実際的ではないということで、そのような決意にいたったわけです」

 「私たちがもし、中華人民共和国のうちにとどまるならば、中国憲法に基づいたすべての権利が与えられるべきです。私たちは中国の枠組みの中にとどまった場合、チベット族と漢族の両者の利益が得られると考えたわけです。つまり、私たちチベット族が中国国内にとどまることで、経済的な利益を漢族から受けることができる。チベット族の側からは漢族に私たちのもっている仏教的な背景を持つ、精神性という利益を与えることができる。このように両者の利益を図る考え方に基づき、1974年以降、独立は一切、求めておりません」


 「数年前に中国の方が書いたニュース記事が出たことがある。その中では非常に多くの中国の知識教養人から、独立を求めず中道、どちらの極端にも偏らないアプローチを取るという私たちの決定に対し、賛同を得ることができた。外国に住んでおられる中国の方々も含めますと、1000人ぐらいの数があったのではないか。このような状況を考えてみても、中国共産党の幹部がとっている態度は正しいことではないと考えている漢族の数がますます増えている」

「私たちチベット人は中国の言葉や文字とはまったく別の独自の言葉と文字を持っている。私たちチベット人が持っている気質や関心も中国の方とはまったく別のものです。そのようなことを背景に中国のハードライナーは、私たちが中国からの分離を図るのではないかと考え、ますます私たち本土のチベット人たちに抑圧を加えてくる傾向が出てきた。漢族、チベット族と分けて考える場合に、チベット族に対する見下した態度がどうしても出てきてしまう状況にある。最近、中国政府の方では、そのような政府の方針がまったく役にたたないということが普通に、認識されはじめてくるような時代に入っており、現実に見合ったアプローチをしていくことが必要であると、広く認識されるようになってきている」


 「私はいつもヨーロッパなどでもこのような話をしているが、チベット問題に関して支援してくださる方々がますます多くなってきている。そのような状態は、中国はおもしろくないということになる。チベット問題があることを中国政府は抹殺することができない。世界的にもチベット問題がすべての国々に認識されてしまっているということをおもしろくなく感じている人たちがいるようだ」

 「このような状況下で、環境問題について調査するグループをつくって、エコロジーの立場から調査をチベット内に入れることもよい考えではないか。中国人のエコロジストの学者の方たちと手を組んで、ともに世界環境という立場からチベットという標高が高い地域の環境を守るという面から、ぜひ、チベットを支えていただきたい」
「今の世界情勢において、環境問題は非常に大切な部分となっている。ある中国人のエコロジストは、チベット高原は地球温暖化の問題などに与える影響が南極、北極と同じような第三の極だ、といっている。このように環境問題といった部分から支援をしていただければよいのではないか。ぜひ行って調査をしていただきたいと思うが、チベットは非常に標高が高いので、きっと酸素ボンベをお持ちになった方がいいかもしれません」

 「私は人は皆兄弟姉妹だと常に考えており、他の方々にお目にかかるときも、兄弟姉妹の皆さんと呼びかけてから話をしています。誰とお目にかかっても笑顔で対応しておりますし、それが私自身にとって役に立っていると思います。日本の方々はどちらかというとフォーマルというか、真面目なお顔をされて座っておられることが多いわけですが、できれば笑顔で対応していただければと思っております」


 「私は1人の仏教の僧侶でありますので、異なる宗教間の調和を図るということ、チベットの文化、仏教維持・保全していくこと、チベットのみならず、地球全体の環境問題をより改善していくためのことを行うのを使命としています。古代インドの智恵や知識を今の時代に復興させるのも、新たに加わった私の使命です」

 「皆様方のお立場は、中国に真っ向から批判的なことを言うのは難しい状況にあるかと思われますが、1954年、55年の段階に、私が北京を訪問したとき、毛沢東主席にお目にかかったことがあります。毛主席が私に『チベットの国旗というものはありますか』とお尋ねになりました。『あります』とお答えすると、毛沢東主席は『中国の赤い国旗とともにぜひチベットの国旗を維持して掲げるべきである』とおっしゃってくださいました。私自身は毛主席からじかに、チベット国旗を掲げる許可をいただいているわけです」


2018.11.20 産経 
https://www.sankei.com/world/news/181120/wor1811200024-n1.html