米中貿易戦争が激化している。第一弾第二弾の500億ドルの対中関税に加え、2000億ドルの追加関税が掛けられ、これに報復する形で中国も関税を強化しているのだ。

そして、今月下旬に予定されていた米中経済協議も中止に追い込まれる可能性が高い。米国はさらに2,670億ドルの産品にも関税をかける方針を示しており、これは昨年の中国の対米輸出額を超える金額になる。つまり、すべての中国製品に関税をかけるとしているわけである。これは単純な経済の問題ではなく、ルールと仕組みの問題であり、米中の価値観と覇権をかけた戦争といっても良いのだろう。
基本的に、グローバリズムとは『ヒト モノ カネ』の移動の自由である。これが成立するためには参加者全員が同じルールで戦う必要があるわけだ。冷戦終結で中国は改革開放路線に転換し、最終的な自由化を約束することで、同じ市場で戦う事を許されたわけである。

しかし、中国は自由市場の恩恵だけを受け、為替の自由かも資本の自由化も先送りしてきたのである。さらに言えば、習近平首席は「新時代の中国の特色ある社会主義」を掲げ、社会主義への回帰と中国の覇権主義を世界に謳ったのであった。これは覇権国家であるアメリカへの挑戦であるだけでなく、自由市場への全体への挑戦でもあるわけだ。

これに対して、米国はこれまでの自由貿易という言葉に公平という言葉を付け加え、自由で公平な貿易を進めるとし、同じ自由主義の国に賛同を求めているわけだ。スポーツに例えるとわかりやすいが、ドーピングやいかさまOKの国と禁止している国が同じ土俵で戦えるわけがないわけである。そして、米国は中国の自由市場からの排除と退場に向けての作業を始めたわけである。

まず、ZTEやファーウェイの排除による通信の安全を確保し、関税により壁を作ることで、世界的な商品生産網であるグローバルサプライチェーンからの排除をはじめ、留学生ビザを5年から毎年更新にすることで技術流出を防止、中国企業による米国企業の買収もできない仕組みを強化した。

さらに、『中国人民解放軍の兵器や装備品を管理する部門とその責任者』を金融制裁リストに載せ、世界中の金融機関に資産の凍結と取引の停止を通告したのである。金融制裁は鬼ごっこのようなものであり、制裁対象と取引すれば自身も制裁を受ける仕組みになっている。つまり、中国人民軍との武器取引を禁止したのと同様なのである。そして、これに従わなければ中国の国有銀行も制裁を受けることになり、最悪ドル決済が禁じられ破綻することになる。

建国以来、米国にとっての最大の正義は『自由を守ること』であり、そのために世界中で大量の血を流しながら世界の覇権を維持してきたわけである。現在、世界的に大きく報じられ始めているウイグルの100万人強制収用問題も米国の正義を正当化するものの一つであるといってよい。また、米国政府は戦略PR会社を雇い、中国の知的財産権問題などに対する世界的なPRも開始した。米国は自由を脅かすものを許すわけもなく、現在は戦争の始まりに過ぎないわけである。

そして、日本のメディアではこれをトランプが主導しているように報じているが、実は議会の方が中国に厳しい態度を示しており、国防権限法では8割以上の議員が中国への制裁強化に賛同したのである。

つまり、例えトランプが倒れたところで米国の方針は大きく変わらないといえるのだ。米国にとって、安全保障はすべてに優先し、経済も金融も外交もその道具の一つに過ぎないわけだ。日本では一部の財界人や議員などが日中友好を謳い、中国との関係強化に動いているが、これは米国と敵対する行為であり、これを理解しているの理解に苦しむところである。

20181011 ニュースヴィジョン
https://news-vision.jp/article/189149/