中国メディアの観察者網は9日、「インドの独占を打破、中国が海港4カ所をネパールに開放」と題する記事を発表した。ネパールはこれまで、物流の大部分をインド経由のルートに頼ってきた。そのため、インドとの関係緊張で、物流を止められ国内が大混乱したことがある。中国は「一帯一路」政策と絡めてネパールの「取り込み」を図っていると見られる。その背景には、インドとの対立もある。
中国とインドは現在は双方とも安定した関係の構築を望んでいるように見えるが、国境問題を抱えていることもあり、潜在的な「敵対国」と評しても過言ではない。中国は、インドと対立関係にあるパキスタンとは極めて緊密な関係を築いている。中国はネパールの「取り込み」も狙っていると考えてよい。

観察者網によると、ネパールでは7日、中国側が天津、深セン(広東省)、連雲港(江蘇省)、湛江(広東省)の港をネパール側に開放することで両国政府が合意したとの報道があった。さらに、中国は蘭州(甘粛省)、ラサ(チベット自治区)、シガツェ(同)の通関と道路施設もネパール側に開放した。

ネパールはこれまで、ヒンズー教を基盤とする文化が極めて近いという背景もありインドと緊密な関係を構築してきた。両国間ではビザはおろかパスポートすら持たず住民が行き来している。ところが、2015年に公布されていた新憲法で、インドが自国系住民の権利の明記を求めていたがネパール側が応じなかったことで両国の関係がこじれた。インドはネパールに通じる主要道路を約5カ月に渡り封鎖。ガソリンやボンベ入りガス、食糧、衣類、日用品の供給がストップしたため、ネパール社会は大混乱した。

その後も、ネパール国内で広く流通しているインドルピー紙幣に関連するインド側の措置で、ネパールは混乱した。その一方で、ネパールに急接近したのが中国だ。2017年にネパールが中国の「一帯一路」構想参加を決めると、チベット自治区からネパールに通じる鉄道の建設を発表。また、ネパールでは同年12月の総選挙でネパール共産党毛沢東主義派が勝利し、親中派のオリ政権が発足した。

ネパールにとって、インドを経由しない陸路を確保することは「安全保障」につながることになる。観察者網は、ネパール政府関係者が中国の港が利用可能になったことについて「日本や韓国、東南アジアとの輸出入で時間を節約でき、市場開拓にも役立つ」と高く評価したと伝えた。

ネパールが物流の大部分を中国経由のルートに頼ることもあまり現実的ではない。また、今度は中国の意向に逆らえなくなるという問題も発生する。

インドにあるチベット亡命政府のロブサン・センゲ首相は2018年4月、中国への配慮から国境管理が強化され、亡命がより困難になったり、亡命後にネパールで暮らすチベット人への文化的抑圧が強まったりする恐れがあるとの懸念を示した。

2018年9月11日 
https://www.recordchina.co.jp/b642972-s0-c10-d0142.html