ナダの大学に通う中国人留学生は、1万キロ離れた中国新疆ウイグル自治区に秘密裏に建設された、21の収監所を発見した。この学生は、カナダ政府の助成金を受けて衛星画像を分析する研究プロジェクトに取り組んでいる。
「天井のない監獄」とさえ揶揄される中国西部・新疆ウイグル自治区。中国共産党政権により、現地住民は厳しく監視され、行動を抑制されている。海外のウイグル組織は、150〜200万人ほどが労働教養施設にいると推計し、非人道的な扱いを受けていると訴えている。

カナダ紙グローブアンドメールによると、同国ブリティッシュコロンビア大学で法学を学ぶ、張肖恩さん(28)は、衛星で撮影した画像を分析し、新疆ウイグル自治区にある21の収容所と疑われる施設を発見した。この国の助成金プログラムである研究によると、施設を囲うように監視塔が立ち、外壁上部にワイヤーフェンスが張られているという。

ウイグル族の信教を反体制勢力と恐れ、中国共産党は「集中教育転化施設」と呼ばれる実質的な収容所を建設している。収監者はウイグル文化、言語、信仰の放棄と同時に、共産党に従うよう指導を受ける。

新疆地域を研究する米ワシントン大学ダレン・バイラー人類学教授も、張さんの発見により、施設が計画的に建設されたと証明できるという。バイラ?教授は、施設には公安の監視所や休養施設、広場などがあることから、現地政府が急務に対応したものではなく、中央当局が組織的に計画性をもって建設していると推察した。

これらの収監施設については、伝わる情報がごく限られている。何人収容されているのか、何の罪で拘束されたのか、いつ釈放されるのか、そもそも複数ある収容所の中のどこに収監されているのか、家族は知ることができない。外国メディアも地域に立ち入ることを厳しく制限されている。

信仰により、たとえ外国籍であっても新疆ウイグル自治区に立ち入れば拘束される。施設に20日間拘束されていたカザフスタン人のオミール・ベカリ氏はAP通信の取材に応じ、「私や家族、友人らの信仰の否定と、共産党への感謝を強要された。もし断れば、壁に向かって5時間立ち続ける罰を受け、一週間の独房入りを命じられた」と語った。

「凄まじい心理的な圧力だった。自分自身と家族、地域文化を否定しなければならなかった。釈放後は何度も自死を考えた」と苦境を語った。

また、米国に留学し、地域に帰国したウイグル族の学生も、拘束の経験をフォーリン・ポリシーに語っている。「24時間座り続けることを強いられた。動いてもしゃべってもいけない。看守から、ひたすら『自分を批判』するように言われた」という。

*リスクに直面しても なお行動する

新疆ウイグル自治区カシュガルで、地域を監視する警察官(GettyImages)

フィナンシャル・タイムス7月11日付によると、新疆ウイグル自治区では、中国当局による「反テロ対策」により両親と親せきが拘束され、子供が孤児状態になったケースが、何千例もある。

ドイツのミュンヘン拠点の世界ウイグル会議代表ドルクン・イサ氏は人権監視組織ThinkProgressの取材に対して「今年初めに100万人ほどが収容所にいると聞いた。誰かが釈放されたという話を聞いていない。半年以上経った今も連行は続いており、いまや150万、200万人ほどかもしれない。私たちも分からない」と答えた。

イサさんによると、収容所の設置はいつごろ始まったのか明確ではないが、数年前から始まったという。新疆ウイグル自治区の人口は800万人で、収監者は10%〜25%に及び人々の自由が奪われている。

収容施設を発見する研究を続ける張肖恩さんは、中国一流大学の北京大学で中国文学を学び、卒業後渡米。セントルイスのワシントン大学で東アジア研究の修士号を取得した。

1989年六四天安門事件に関するドキュメンタリーを視聴し、中国共産党政権の権威主義を目の当たりにした。法律の知識が、中国の人権問題に立ち向かう力になると考え、現在はカナダのブリティッシュコロンビア大学で法学を学んでいる。

中国共産党は張さんの活動に目を光らせている。張さんは今年3月、中国SNS微博で、反共産党の言論を発表すると、数時間後に国内にいる両親が公安に呼び出された。

こうした圧力にもかかわらず、張さんは中国人権問題に焦点をあてた研究を進める。そのモチベーションは、新疆地区の住民や彼自身の家族など、中国共産党による思想強要に常に耐えている人々がいる、ということだという。

2018年07月13日 kabutan.jp
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