尖閣諸島が再び日中対立の象徴として取り上げられ始めています。先日は尖閣沖公海でギリシャ船籍の貨物船と中国漁船が衝突し、海上保安庁の巡視船に一部の中国人乗組員が救助された一方で、日中交流団体幹部の日本人がスパイ容疑で中国当局に拘束される事案も発生しました。かねて中国に対し厳しい論調で臨んできた産経新聞では、これらの問題を逐一取り上げ、たとえば「日中友好人士なぜ次々拘束 党内の権力闘争と関係か」(7月29日付)などとして詳述しています。


 日中間の対立をひもとくにあたって、必要とされるのは世界的な、より大きなスコープで問題を捉え直すことです。確かに日中の懸案といえば尖閣諸島ですが、中国の海洋進出に伴うトラブルは南シナ海でも起きています。同海の広域な管轄権を主張する「九段線」の国際法的根拠は否定され、仲裁裁判においては中国の全面敗訴となりました。中国にすれば、いままでの国際的な法制度や体制が、既存の大国に有利で、台頭する中国には不利に作り上げられているという被害者意識がある一方で、尖閣諸島も南沙諸島も本来は中国のものであるという権利意識も裏返しに存在し、結果としてアメリカという覇権国と追随する日本に対し、新興国中国が世界秩序に戦いを挑む図式であることに相違はありません。

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2016.8.21  産経