南シナ海問題、名指し批判 「航行の自由」作戦継続へ

カーター米国防長官は4日、シンガポールで開催中のアジア安全保障会議(英国際戦略研究所主催)で演説し、南シナ海問題について「中国の行為は自らを孤立させている」と名指しで批判し、米軍による「航行の自由」作戦を継続する方針を表明した。国際秩序に基づく解決を訴えた昨年の演説から、さらに圧力を強めた形だ。
 南シナ海問題を巡っては、フィリピンが提起した常設仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)の裁定が近く出る見通しだ。中国に不利な判断が出ると予測されており、中国は既に受け入れを拒む姿勢を明確にしている。カーター氏はこの日の演説で「我々は、裁判所の判断が中国と周辺国にとって外交政策を改め、緊張を緩和する機会になるとみている」と述べ、中国側に裁定の受け入れを要求した。

 また、米国がアジア太平洋地域で影響力を維持し続ける決意を示し、そのために「今後も最新鋭の装備をこの地域に配備する」と語った。中国が南シナ海の領有権問題にとどまらず、領空やサイバー空間においても「地域の不安を生んでいる」と批判した。最近取りざたされている中国による南シナ海の防空識別圏設定の動きを念頭に懸念を示したとみられる。

 中国海軍が今夏、米海軍主催の環太平洋合同演習(リムパック)に参加することを表明し、軍同士の対話のパイプが機能している点も強調。北朝鮮の核問題など共通の利益を持つ地域課題については「米国は、中国が国際社会で役割を果たすことを歓迎する」と表明。米中は6、7日、北京で戦略経済対話の開催を控えており、対話枠組みを維持するために一定の配慮を示した。

中谷防衛相、名指し避けて「強く懸念する」
 中谷元(げん)防衛相も4日、カーター氏に続いて講演し、中国による南シナ海での大規模な埋め立てや人工島の軍事拠点化の動きに対し、名指しを避けつつ「国際法に基づく海洋秩序を著しく逸脱するもので、強く懸念する」と述べた。米軍による「航行の自由」作戦への支持も重ねて表明した。

 日本政府は2日、東シナ海の日中中間線付近で中国がガス田の構造物を増設したと発表した。これを踏まえ、中谷氏は「東シナ海における一方的な振る舞いは状況をエスカレートさせ、緊張を高める」と批判。南シナ海上空で5月、中国軍機が米軍機に異常接近した事案を念頭に「一部の国による極めて危険な行動も発生し、この地域の安全保障環境は厳しさを増している」と指摘した。

 そのうえで「大国は不測の事態を回避するため、自制的に振る舞うことが求められている」と訴えた。

 中谷氏は「開かれた自由で平和な海を守るには、各国の英知を結集し、国際法の原則に基づく秩序を確立することが重要だ」と述べ、東南アジア諸国連合(ASEAN)と連携して海洋安全保障に取り組む考えを示した。

 また、核・ミサイル開発を進める北朝鮮を「地域と国際社会の安全に対する重大かつ差し迫った脅威」と非難した。

2016年6月4日 毎日
http://mainichi.jp/articles/20160604/k00/00e/030/274000c