貴重な仏像や法具50点

 花巻ゆかりのチベット仏教学者・多田等観(1890〜1967年)が持ち帰った資料を集めた企画展は、花巻市高松の市博物館で開かれている。世界でもまれな仏伝図「釈迦牟尼世尊(しゃかむにせそん)絵伝」の現存する全25枚、等観とダライ・ラマ13世の写真など、貴重な資料が並ぶ。同館担当者が「等観を知らない人でも、目で見て、感じられるパワースポット風の展示を狙った」と話す会場はチベット仏教独特の雰囲気があふれ、鑑賞者の関心を呼んでいる。
 同絵伝ほか、釈迦如来坐像や持金剛菩薩坐像といった仏像、仏画、法具など約50点を展示。資料を囲むように若き等観、等観と親交が深かったダライ・ラマ13世の写真が会場上部に据えられているほか、入口近くには等観が使っていた書架や座具なども置かれている。

 中でも釈迦牟尼世尊絵伝は、貴重さで注目の的。造詣の深い来館者が職員を呼び止め、事細かに質問する姿も見られる。絵伝に収められているという合計120の物語を解説する資料(龍谷大学提供)も会場内に備えられ、興味深げに目を通す人もいる。

 盛岡市西青山から来館した小野昌英さん(76)は、内容豊富な展示に驚きの声を連発。「すごい。よくこんなに集めたものだ。これだけのコレクションがなぜ花巻にあるのか不思議だったが、展示を見て納得できた」と話し、チベット仏教や展示内容だけでなく、等観と花巻の関わりにも理解を深めていた。

 等観は1890(明治23)年、秋田市生まれ。1912(同45)年にダライ・ラマ13世と会う機会を得るなどチベット仏教との関係を深め、経典や文献など、貴重な資料を日本に持ち帰った。太平洋戦争末期の45(昭和20)年には実弟を頼って花巻に疎開し、現在の花巻市太田に身を寄せていた高村光太郎とも交流。67(同42)年に亡くなっている。

 企画展は7月5日まで。期間中は無休。開館は午前8時30分〜午後4時30分で、入館料は一般350円。問い合わせは同館=0198(32)1030=へ。

岩手日日新聞社
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