チベット仏教の最高指導者を追ったドキュメンタリー「ダライ・ラマ14世」の公開を記念し、同作のナレーションを担当した俳優の柄本佑と「真言宗寺院 密弘寺」の僧侶で「中野 坊主バー」のバーテンダーも務める山田祐也氏が、6月14日、東京・渋谷のユーロスペースでトークイベントを行った。

チベットの自由と世界平和を訴え、1989年にノーベル賞を受賞したダライ・ラマ14世。偉大な存在に萎縮してしまいそうだが、その素顔はユーモアと愛情にあふれた僧侶だそう。柄本はダライ・ラマについて「(ナレーション前は)名前の響きを知っているくらい。顔も全然知らなかったですね……」と正直に告白。「監督に本を3冊くらい貰って、読みながら」と収録を振り返った。
山田氏は「5回映画を見た。それくらい興味関心を引く作品だった。描かれている内容が深刻で重大」といい、劇中のダライ・ラマについて、「どんなお話をしていても、根っこにあるのは仏教の教えなんだなというのが伝わってくる。ダライ・ラマという方の中にある仏教を皆さんに説明するような映画」と絶賛した。

さらに、チベット仏教にあまりなじみのない観客のため、「心において見て頂きたいのは、主人公はチベットの方々ということ。日本の人たちとは文化や風習が違う。皆さんの思い描く仏教の姿でないものもあったりします。それを理解していないと、ときに非常にダライ・ラマがドライに見えてしまうかもしれません」と、同じ仏教の中にも違いがあることを説いていた。

山田氏の説明に聞き入り、「お寺に来ているみたいですね(笑)。これ聞いてから見たかったな」と悔しげな柄本。報道陣向けの写真撮影中も「出家ってどういうことなんですか?」「催し物みたいなものがあるんですか?」とマイクを通さずに山田氏に質問し続け、「すみません。お客さん全く関係なくしゃべっちゃった(笑)」と仏教の世界に興味津々だった。

映画は、写真家の薄井大還氏が、1991年に法王のポートレイト撮影を許可されたことが縁で製作が企画され、チベット亡命政府から了承を得て、光石富士朗監督のメガホンで6年の歳月をかけて完成した。インドのダラムサラと、チベットの伝統と風習が受け継がれるラダックへの取材を通して、受け継がれてきたチベット仏教の教えと、ダライ・ラマの存在、そして亡命後のダライ・ラマ法王14世とチベットの人々が作り上げてきたものを映し出す。

2015年6月15日 映画ドットコム
http://eiga.com/news/20150615/1/