中国が南京事件犠牲者「30万人」に固執している。中国のこの言い分はおそらく変わることがあるまい。習近平国家主席自身が、昨年3月のベルリンでの演説や同12月の南京事件の追悼式典でこの数字を挙げた。日本政府はこの数字を「適切でない」と中国に申し入れていたが、中国外務省の洪磊副報道局長はこのほど、「動かぬ証拠があり、結論は出ている」「南京大虐殺は日本軍国主義が侵略戦争下で犯した残忍な犯罪」などとするコメントを出した。主席自身がいうのだから、この数字に異を唱える声が中国国内で出てくるとは思えない。



『肛門に焼いた鉄、獣姦、零下40度で水牢、胎児を引っ張り出す…』文化大革命という大虐殺

 当欄ですでに何度か触れたが、この数字はあまりにも過大なものだ。事件当時(昭和12=1937年)の人口が20万−30万人とみられる南京で、その全員を殺害することなどありえない。しかし現在の中国で実証主義による歴史は成立しない。党の公式見解が優先されるのが中国である。

 「30万人」という数字に中国は今後も固執するだろうから、ここで中国現代史のもう一つの「30万人」を見ておこう。
 「内モンゴル自治区政府幹部で、ジェリム盟出身のアムルリングイは、地面に押さえつけられて、真っ赤に焼いた鉄棒を肛門に入れられ、鉄釘を頭に打ち込まれました」

 「あるモンゴル人は、マイナス四〇度まで下がるモンゴル高原の冬に、膝まで水を満たした『水牢』に入れられ、その足は水とともに凍ってしまいました」

 「ブタやロバとの性行為を強制する、燃えている棍棒(こんぼう)を陰部に入れるなど、中国人たちはおよそ人とは思えない残虐な行為を行っていました」

 「妊娠中の女性の胎内に手を入れて、その胎児を引っ張り出すという凄惨(せいさん)な犯罪も行われ、中国人たちは、これを『芯を抉(えぐ)り出す』と呼んでいました」


モンゴル人ジェノサイド…善なる『革命行為』

 静岡大学教授、楊海英(大野旭)氏の著書「狂暴国家 中国の正体」(http://www.amazon.co.jp/dp/4594071198)から引いた。楊氏は内モンゴル自治区出身で、自らを「亡国の知識人」とみなしている。

 これら引用文が示す事例の、なんと残忍なことか。これらは1966年から中国で吹き荒れた文化大革命で、モンゴル人に対してなされたとされる事例である。主導したのは漢族。被害者数について楊氏はいくつかの数字を挙げている。欧米の研究者の数字として、拘束されたモンゴル人約50万人、うち殺害された者10万人。内モンゴル自治区のジャーナリストや研究者の数字として、殺害された者と釈放され自宅に戻ってから亡くなった人の合計は「30万人」。楊氏も、これは妥当な数字だとしている。

 楊氏の編集による大部の本「モンゴル人ジェノサイドに関する基礎資料」(http://www.amazon.co.jp/dp/4594071198の一部を見たことがあるが、内部資料などを丹念に集め、モンゴル人の被害の実態を明らかにしている。基底には楊氏の、同胞が味わった苦しみへの怒りと、モンゴルへの愛情があるのはいうまでもあるまいが、姿勢は大変に実証的である。

 氏は「狂暴国家 中国の正体」で、モンゴル人にとって文化大革命はジェノサイド=民族抹消行為だったとしている。「毛沢東と、人民の味方たる共産党の首長が断罪した『民族分裂主義者』たちを殺害することは、躊躇(ちゅうちょ)ない善なる『革命行為』に発展していった」と。内モンゴル自治区のモンゴル人が「民族分裂主義者」と断罪されたとき、中国人(漢族)は「善」として虐殺をなしたというのである。

 中国はこのようなことを認めようとしない。文化大革命全体の実態も闇に沈んでいるのである。そのような国が南京事件「30万人」を言い募っているということは、南京事件のこの数字が過大なものであると国際社会にアピールする際、紳士的に付記しておいてよいと思う。



辻褄合わせたいから「30万人」…親中派・媚中派の「左傾」人士は鑑とせよ

 楊氏の「狂暴国家 中国の正体」については、きちんと紹介しておくのが公平な姿勢だろう。本稿は「30万人」という数の偶然の一致から南京事件に関して同書を引用させてもらったが、同書は別に南京事件を扱ったものではない。中国による民族抑圧の実態とその背景にある中国の思考法を、抑圧される民族の側の視点で描いた著書である。

 モンゴル問題に限らずウイグル問題もチベットのそれも、同じ視点で取り上げられていく。中国という異形の国の実態を浮き彫りにする好著であり、日本人に複眼的な視点を与えてくれるものだ。日本人は日本人の立場で中国について考えることに終始しがちだが、ユーラシア大陸で中国に苦しんできた民族の側から中国を見る目を教えてくれるのである。

 楊氏の提言に学べるところは大きい。日本はモンゴルをはじめユーラシア外交にもっと目を向けるべきだという提言もそうだし、あるいは集団的自衛権をめぐる日本国内の議論について述べた次のようなくだり。「自衛権のない国家は去勢された男のような存在です」。泰平の平和のなかで集団的自衛権反対を叫ぶ左傾人士は、これをなんと読むか。

 あるいは能天気に日中友好を説く日本人への、次のような文章。「ぜひ、『日中友好論者』たちにも中国共産党支配下の内モンゴル自治区や『反テロの前線』たる新疆ウイグル自治区、焼身自殺による抗議活動が続いているチベットにも足を運んでほしいものです」。

 媚中派、親中派、さらに「南京大虐殺」説を日本であおる人士たちにも、よく読んでほしいものである。 


産経 2015.1.23
http://www.sankei.com/west/news/150123/wst1501230009-n1.html