中国共産党紀律委員会は3日、同委が組織した中央第四巡視組(中央調査第4チーム)がチベット自治区の状況を調査した結果を明らかにした。チベット自治区では「反分裂闘争の情勢が依然として厳しい」、「少数だが、政治上の立場がしっかりしていない党員幹部がいる」などとした。腐敗問題も存在するという。

 「反分裂闘争」とは、チベット独立運動の押さえ込みを指すが、中国当局は「独立までを求めていないが、現在の統治の状況を批判/反対する」立場の人々も「独立を目指している」として取り締まりの対象にすることがある。
 中央巡視組の報告は、チベット自治区の共産党・政府関係者にも、中央の方針に納得しない人が相当数存在することを認めるものだ。「政治上の立場がしっかりしていない」とは、やはり中央の方針に批判的で、「分裂主義」として取り締まられる側の人に同情的な、党員幹部の存在を示す。

 腐敗問題については、「自治区の関連部門に問題が集中している。一部の基層幹部に腐敗問題が突出している。監督責任の実行責任に力羽不足している。腐敗を懲罰する力と、実情が求めるものになお、距離が存在する」と報告した。

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◆解説◆
 中国で言う「幹部」とは日本における「幹部」よりも幅が広く、ある程度の管理を行う者はすべて「幹部」と呼ぶ。「基層幹部」とは、「幹部層の底辺」であり、一般人に対して直接、権力の執行などを行う機会が多い階層と考えてよい。

 チベット自治区など少数民族の「自治地域」で中国は積極的に、該当する少数民族幹部の登用を進めてきた。共産党や国家の理念としても「民族の別に関係なく、共産党や国家の理念を共有する“同志”であり有能」ならば、地位を与えることはむしろ自然な流れと言える。

 登用される少数民族はもともと、「往時の支配階級」ではない人がほとんどだった。つまり、旧支配階級の「没落」で、被支配階級が「利益」を得たことになる。現実問題として、少数民族地域における少数民族幹部の登用は共産党にとって「異地にあって味方を増やす」こを意味した。

 ただし、少数民族地域における少数民族幹部に話を聞くと、共産党のやりかたすべてに「共鳴」しているわけではない。「独立など不可能なのだから現実問題として、体制内で地位を得た方がよい」といった「本音」の人が多い。そのため、当局の施策に「不満」がつのれば、「政治上の立場がしっかりしなくなる」ことは当然だ。

 一方で、少数民族地域で「腐敗」の問題は、漢族地域よりも深刻になりがちだとの指摘がある。中国は早い時期から、北京などの都市部に「民族学院」、「民族学院」などと称する教育機関を設立してきた。少数民族地域は教育事業も遅れていることを視野に入れた学校組織であり、少数民族の「幹部育成機関」として機能してきた。中学生ぐらいから、都会の「民族学院」などの付属校で学び、最終的には大学卒業、あるいはそれ以上の学歴を取得するものも珍しくない。

 卒業後は出身地に戻り党・政府の「幹部」となる者も多い。それまで長期にわたりす過ごしてきた大都会と比べれば、庶民の身なりは貧しく、知識も乏しい。その結果、地元の人が“どうしようもない田舎者”に思え、「自分は身分が高い。一般人からは隔絶した存在だ」と、ゆがんだエリート意識を持つ場合が少なくないという。

 その結果、「特別な立場にある自分が、大きな利益を得ることも当然」と、腐敗に手を染めやすくなるという。

 中央第四巡視組が指摘した、チベット自治区における「基層幹部」の多くは「チベット族である庶民と接する機会の多い、チベット族基層幹部」と考えてよい。

 少数民族である庶民の場合、幹部の不正を告発しようとしても「独立主義者」などのレッテルを貼られて処罰されるとの恐怖心が強いのであきらめてしまうことが多く、結果として腐敗が明るみ出にくいとの指摘もある。

2014-11-04 サーチナ
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