儒教文化の国々は長い歴史的記憶を、ともすればかなり政治化した形で抱き続けることにすぐれているようだ。

例えば1914年にフランツ・フェルディナンド皇太子を暗殺したガブリル・プリンツィプ青年の記念碑がボスニアに建てられるなどということは想像するに難いし、またその記念碑設置の許可が現在の外交取引の材料に使われるようなことはさらに想像することが難しい。

しかし東アジアには独自のルールと法則が存在し、残念ながら、それは第一次世界大戦以前の欧州で見られたものと似通っているともいえる。もう過ぎ去ったことが現在の政治プリズムを通じて云々され、疾風のような愛国感情を巻き起こすのである。
東アジア諸国においては韓国にせよ、中国にせよ、ベトナムにせよ、ナショナリズムが公式イデオロギーにおいて重要な役割を担っている。高句麗の歴史を巡って最近激しい論争があったように、中国と韓国の間には多くの矛盾が存在している。ただし、ナショナリズム高揚の材料として両国で共通しているのは日本を悪者扱いしているという点である。

2014年1月、ハルビンでは小さな記念碑が設けられた。これはもう百年以上まえの1909年、安重根が明治元勲の一人である伊藤博文を暗殺した事件を記念するものである。安重根は韓国でも北朝鮮でも同じく国家的英雄と考えられてきた。韓国は長年にわたってハルビンにおける記念碑設置を求めてきたが、中国はあまり乗り気ではなかった。

第一に最近にいたるまで中国は日本との関係を悪化させることを望んでいなかった。第二に政府高官が武装民族主義者に攻撃されるという事件自体、あまり中国の歓迎するものではなかった。ウイグルやチベットに第二の安重根が出てくることは中国政府が望むことではないからだ。

しかし2014年1月には一転して、ハルビンに安重根のメモリアルが作られ、おそらく韓国人観光客らの人気スポットとなるだろう。

この背景にあるのは日中関係の悪化があり、中国は韓国を味方につけようとしているのは理解できる。特に、韓国は日本と同様に米国の同盟国である。米国は中国の主要な地政学的ライバルだ。東アジアにおいてはこのように歴史が政治的手段のひとつとなる。

これは20世紀初めにおいて東アジアにおおくの災難をもたらした日本の侵略主義が生み出した環境だが、何も客観的事実だけに基づいたものではない。韓国よりも植民地支配の長かった台湾においてはそれほど反日的な感情があるわけではない。また第二次世界大戦中、韓国や中国が日本の侵略に苦しんだのと同じように、ドイツからの侵略に苦しんだポーランドやロシアにおいて、今日同じような反ドイツ的感情があるわけでもない。つまり、今の状況においては悪者を必要とするナショナリズムの論理が大きな役割を果たしているのだといえよう。

多くの場合、ナショナリズム感情というのは実際の地政学的利害の前には意味を成さないが、東アジアにおいては一見たんなるシンボリックな行動であっても、現実的に大きな政治的意味をもつことがある。

2月末、中国政府は南京で朝鮮人慰安婦が働かされていた場所にメモリアルを設ける予定だ。これは決して人道的な考慮によるものではなく、政治的行動であることを忘れてはならない。第二次世界大戦の終わりは未だはるかかなたと言えそうだ。

ロシアの声 12 3月 2014
http://japanese.ruvr.ru/2014_03_12/269038670/