スペインの裁判所は先週、中国の江沢民元国家主席や李鵬元首相ら元指導部5人に対し、チベット自治区での大虐殺に関与していた容疑で逮捕状を出した。これを受け、スペインでは外交面・経済面での中国の反発を巡り懸念が高まっている。

12年11月の共産党全国代表大会に出席した江沢民氏。同氏を含め5人の元指導者に対し、スペインの裁判所は虐殺の関与に関して逮捕状を出した=AP
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12年11月の共産党全国代表大会に出席した江沢民氏。同氏を含め5人の元指導者に対し、スペインの裁判所は虐殺の関与に関して逮捕状を出した=AP
 江氏らは、中国当局がチベット自治区の住民に対し人権侵害を行ったとされる時期に「政治的・軍事的な責任」を負っていたと言われている。
 江氏らがスペインや同国と犯罪人引き渡し条約を締結する国を訪問した場合、拘束される恐れがある。ただ、中国の元指導部はほとんど海外を訪問せず、江氏ら5人がスペイン・マドリードの裁判所に姿を見せる可能性は極めて低い。

 それでも中国政府は今回の動きに怒りの反応を示し、刑事告発したスペインのチベット人支援団体を非難した。中国当局は21日、スペインの駐中国大使を呼び不満を伝えた。こうした不満は、先週マドリードで行われた中国外交官とスペイン政府関係者との会合でも繰り返し伝えられた。

 中国外務省の洪磊副報道局長は、中国が今回の決定についてスペインに釈明を求めたことを明らかにした。中国はスペインのチベット人支援団体が「繰り返しこの問題を操作した」として「強い不満と断固たる反対」を表明したという。


■「タイミングが悪かった」

 スペインのガルシアマルガリョ外相は、スペイン政府は自国の司法手続きに干渉する気はないと公式に断言した。だが、スペイン外交官によると、本来なら問題のなかった主要貿易相手国との関係に今回の論争が及ぼす影響に関し、政府は深刻な懸念を抱いているという。

 あるスペイン外交官は「この状況は極めて複雑だ」とみている。

 スペインは脆弱な景気回復の中で中国との経済関係強化を望んでおり、同国にとって今回の対立は特にタイミングが悪かったとアナリストは指摘する。


 スペインのシンクタンク、エルカノ王立研究所のディレクター、チャールズ・パウエル氏は「スペインは中国からの投資を呼び込もうとしており、スペインの大企業は中国で足場を築こうとしている。中国当局が契約先決定に大きな発言権を持っていることを考えると、同当局が(裁判所による)今回の決定を進んで受け入れることはないとスペインが懸念していることは明らかだ」と話す。

 今回のきっかけとなった刑事告発は、7年前に親チベット派人権団体が行った。スペインには国外で起こった刑事事件についても立件できる比較的広い普遍的管轄権の規定があり、刑事告発はこの規定を利用したものだ。

 中国国営メディアは逮捕状や洪報道局長の反応をほとんど報道しておらず、中国政府が世間の議論を制限することで副次的影響を抑えようとしていることを示している。

By Tobias Buck and Simon Rabinovitch

(c) The Financial Times Limited 2013. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

2013/11/25 産経
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGV25001_V21C13A1000000/