車炎上でウイグル族 締めつけ懸念
中国・北京の天安門広場の付近で車が歩道に突っ込んで炎上した事件で、捜査当局は車内で死亡した3人のほかにも新疆ウイグル自治区の出身者が事件に関与した疑いがあるという見方を強めています。
事件後、自治区ではウイグル族の摘発が始まったという情報もあり、ウイグルの人たちでつくる団体は当局による締めつけが強まることを懸念しています。
この事件では、炎上した車内にいた3人と、巻き込まれた観光客2人の合わせて5人が死亡したほか、日本人男性1人を含む観光客など38人がけがをしました。
関係者によりますと、北京の捜査当局は、車内で死亡した3人のほかにも政府に不満を持つ新疆ウイグル自治区の出身者が事件に関与した疑いがあるという見方を強めていて、中国版ツイッターのウェイボーには29日、当局が手配した容疑者とされるウイグル族の男女7人の名前と顔写真が掲載されました。
関係者によりますと、捜査当局は新疆ウイグル自治区に捜査チームを派遣して背後関係などについて調べを進めていて、自治区の各地ではウイグル族の摘発が始まったという情報もあるということです。
これに対して、中国国外に住むウイグルの人たちでつくる世界ウイグル会議のラビア・カーディル代表は声明を出し、「中国当局はテロとの戦いを名目にウイグルの人々への抑圧を正当化しようとしている」などと、政府側が意図的に情報を操作している可能性を主張し、当局による締めつけが強まることを懸念しています。
関係者によりますと、中国政府の宣伝部門は今回の事件についてどのような形で発表するか、慎重に検討を進めているということで、国内に動揺が広がらないよう事態をいかに収拾するか、当局が苦慮していることがうかがえます。

中国版ツイッターに容疑者とされる7人
中国版ツイッターのウェイボーに掲載された容疑者とされる7人は、25歳から59歳の男3人と27歳から70歳の女4人で、全員が新疆ウイグル自治区出身のウイグル族とされています。
ウイグル族は、自治区の人口の半数近くを占め、政治や経済活動における漢族との格差や宗教活動に対する政府の締めつけになどに不満を募らせ、特に7人の出身地とされる東部のトルファン地区や南部のカシュガル地区ではここ数年抗議行動を活発化されています。
このうちトルファン地区では、ことし6月、刃物を持った集団が警察施設などを襲撃し、警官や住民合わせて35人が死亡しました。
こうした事態を受けて中国政府は、大量の治安部隊を投入し監視を強化していて、ウイグル族に対する締めつけを強めています。

ウイグル族の人たちは困惑
捜査当局が中国政府に不満を持つ新疆ウイグル自治区の出身者が関与した疑いがあるという見方を強めるなか、ウイグル族が多く宿泊する北京市内のホテルの前の道路は人通りが少なく、警備が強化された様子は見受けられませんでした。
通りかかったウイグル族の人たちに事件のことを尋ねると、多くは困惑した様子で「詳しく知らない」と答えました。
新疆ウイグル自治区南部のカシュガルから来たという男性は「よいことであれば支持するし、悪いことであれば支持しません。どんな人であってもそれは同じです」と話していました。
また、ウルムチから来たという女性は「ウイグル族が事件を起こしたのだとすれば、それはしてはいけないことです。同じ中国人なのですから」と話していました。

中国外務省「関係部門が調査中」
今回の事件について、中国外務省の華春瑩報道官は30日の記者会見でも、「関係部門が調査中だ」として、詳しい言及を避けました。
会見で記者が事件についてテロとの関連を質したのに対し、華報道官は「関係部門が調査中であり、その調査結果を待つべきである」と述べました。
また、外国人の死傷者への対応に関連して、「関係国の大使館に対して情報提供や説明を行っている。日本もその1つで、けがをした人への面会にも必要な協力を行った。最後まで適切に処理できるよう引き続き必要な協力を行っていく」と述べました。

中国メディアはほとんど伝えず
今回の事件について中国のメディアは、事件発生当日の28日は死者やけが人などの情報や当局の対応について伝えました。
しかし、29日から30日にかけてはほとんど伝えておらず、中国中央テレビや新華社通信などの国営メディアは、30日は事件について一切報道していません。
中国メディアの関係者によりますと、今回の事件について中国当局は報道機関に対して独自の報道を禁じたということで、今回の事件が引き金となって国内で動揺が広がらないよう中国当局が神経をとがらせているものとみられます。

2013年10月30日 NHK
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131030/k10015686781000.html