中国共産党の新たな最高指導部は、5年後の党大会で定年とされる68歳を超えるベテランが大半を占めた。5年後も常務委員として残るのは総書記に就く習近平国家副主席(59)と李克強副首相(57)の2人だけ。引退したはずの江沢民元総書記(86)ら長老を巻き込んだポスト争いの結果、若返りは進まなかった。党内の安定を重視した布陣だが、経済などの改革機運が停滞する恐れもある。
 党に近い関係者は新たな最高指導部を「老人政治の時代を迎えた」と評する。習氏と李氏以外に常務委入りしたのは、兪正声・上海市党委書記(67)、張徳江・副首相兼重慶市党委員会書記(66)、張高麗・天津市党委書記(66)、劉雲山・党宣伝部長(65)、王岐山副首相(64)などベテランばかりだからだ。



 胡錦濤氏が2002年に総書記に就任した際の常務委員9人の平均年齢は62歳。07年に習氏が常務委員に就いた際も、平均は62.1歳だった。だが、7人となった今回の常務委の大半は5年後の退任が確実な年齢だ。
 中国を取り巻く環境は変化が激しく、「ベテランの知恵に頼るだけでは改革を進めにくい」との声もある。胡氏が掲げた「小康社会(ややゆとりのある社会)」の実現には、行動力のある若手の登用を欠かせないと見る向きもあったが、ある中国筋は「江氏など長老の意見を十分に反映せざるを得なかった」と語る。

 引退する胡指導部には強力な指導力を持ったカリスマはいなかった。激しい人事抗争の末に、党内の誰もが納得する布陣作りを進めざるを得なくなり、長老の受けも良いベテラン中心のメンバーに落ち着いたようだ。



 改革を着実に進める「仕事師」もいない。15日には、経済政策を担当し、構造改革派とされる王副首相が党員の汚職を取り締まる党中央規律検査委員会トップに回ることが正式に決まった。

 金融改革を期待していた海外関係者からは「残念だ」との声も漏れる。改革に意欲的だとされる汪洋・広東省党委書記(57)や李源潮・党中央組織部長(62)は常務委員に昇格しなかった。

 常務委に次ぐ権力を持つ政治局員には若手実力者も起用されたが、力を発揮できるのは5年後の次期党大会後。14日には中央委員や中央委員候補も選ばれたが、約400人のうち企業関係者は中国石油天然気集団など大型国有企業の経営者ばかり。期待された民営企業家はゼロだった。

 共産党は10年前の党大会で、民営企業家の入党に道筋を開き、競争を軸とした市場経済体制作りに挑むとしていた。既得権益層の国有企業が栄え、民営企業が伸び悩む「国進民退」が加速する恐れもある。

日経 2012/11/15
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1502C_V11C12A1EB2000/