開会中の第十八回中国共産党大会で、チベット自治区の代表団分科会が九日、記者団に公開された。折しもチベット族居住地区で焼身自殺が相次いでおり、記者会見では、海外メディアから質問が集中した。現地からは自殺者を追悼するデモも伝えられ、当局は沈静化に躍起となっている。
 米政府系放送局のラジオ自由アジア(RFA)電子版によると、七、八の両日だけでチベット族六人が焼身自殺を図り、うち三人が死亡。新華社電は十日に一人が焼身自殺したと伝えた。八日開幕の党大会に合わせ、中国政府のチベット政策への抗議とみられる。

 記者会見で質問に応じたチベット自治区のルオサン・ジアンツン副主席は、焼身自殺は「国外の国家分裂主義組織の扇動や画策」と述べ、チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ十四世を指導者に掲げるチベット独立派が仕掛けたものだと批判した。

 その上で「(独立派は)焼身自殺者を英雄行為とたたえるが、チベット仏教は生命を傷つけることに反対している」と述べ、犯罪になるケースもあると警告した。ラサ市のチザラ党委書記は、対策として鉄道やバスターミナルなどでの入境者チェックやインターネット管理の強化を進めていると明かした。
 ただ、RFAは、一連の焼身自殺のうち二人がいた青海省黄南チベット族自治州同仁県で九日、一万人を超える学生や僧侶が政府庁舎や広場に集まりダライ・ラマ十四世の中国帰還を求めるデモを行ったと伝えた。

 一方、同日は新疆ウイグル自治区の分科会も公開された。ヌル・ベクリ主席は、ハイジャック未遂などテロ事件が起きているものの「安定という大局を変えることはできない」と強調。「テロ情報も住民から自発的に提供されるものが増えており、自首も増えている」と治安対策が効果を上げていると述べた。

2012年11月11日  東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2012111102000113.html