「幸福度日本一」の福井県と「幸福の国」ブータンの共通点を探り、本当の幸福について考えようと、福井市民らの団体が十一月十七日、福井市の中心市街地に「ブータンミュージアム」を開設する。福井発の「幸福学会」も開き「幸福」の全国発信を目指す。
 福井県は昨年、法政大大学院が、暮らしやすさなどを指数化して都道府県を比べた幸福度ランキングで全国一位に選ばれた。ブータンは、国王が国民総幸福量(GNH)の向上を国是に掲げ「幸福の国」と呼ばれる。ほかにも「人口七十万人超」「基幹産業が発電」など、類似点が多い。

 ミュージアムの提唱者で、福井市の会社会長野坂弦司(けんじ)さん(75)は、こうした共通点に興味を抱き、三年前ほど前からブータンについて書物などで調べた末、両者の魅力を国内外に発信したいと思い付いた。

 四〜五月に八日間、ブータンを訪問。GNHを調査・研究する王立研究所長らと会談してミュージアム開設への助言を受け、民族衣装や楽器などの資料も収集した。自費で開設準備を進め、県内在住の写真家や大学教授ら、二十人ほどでNPO法人「幸福の国」を設立。理事長に就任し、ミュージアム運営にもかかわる。

 ミュージアムは福井市中心部のビルの一、二階(延べ七百平方メートル)に開設。ブータンの民族衣装やかご、仏具のほか、写真や資料を展示。県内の子どもが「幸福」をテーマに描いたクレヨン画も含め、計約四百点を並べる。民族音楽のコンサートや、ブータンの人との交流も検討している。

 また、福井県内で三カ月に一度、「幸福学会」を開催。哲学や医学、文学などの観点から幸福について考える。

 初回はオープン当日、ブータン研究で知られる国立民族学博物館名誉教授の栗田靖之さんが講演。福井県出身で、日本ブータン友好協会設立に尽力した故桑原武夫京大教授が両国の懸け橋となった経緯や、GNHを紹介する。
 野坂さんは「経済成長だけでは実現しない幸福とは何かを考えたい。自己欲を排し、皆で幸せを分かち合うブータンの精神を伝えたい」と話している。

2012年10月27日 中日新聞
http://www.chunichi.co.jp/article/fukui/20121027/CK2012102702000003.html