ブータン王立大の副学長らを招いた国際ワークショップがこのほど、京都市左京区の京都大百周年時計台記念館で開かれた。京都大ブータン友好プログラムの一環で、「国民総幸福」(GNH)の理念を掲げるブータンの国づくりや、日本の貢献などについて両国研究者が話し合った。
 まず友好プログラム代表の松沢哲郎・京都大霊長類研究所教授が「まだ正式国交のなかった1957年に現国王の祖母である第3代王妃が京都を訪れ、桑原武夫・京大教授(故人)が御所などを案内したのが友好の始まり。50年を超す歴史を背景に一昨年秋に友好プログラムをスタートさせ、これまで50人以上の研究者や学生がブータン10+件を訪れた。今後も健康、文化、安全、生態系、相互貢献を柱に活動を続けたい」とあいさつ。

 その後、王立大のペマ・ティンレイ副学長ら4人が歴史や自然環境、経済、文化、教育などの側面からブータンの素顔を紹介。「教育の普及に伴って都市への人口流入が続き、地方ではコミュニティーが脆弱(ぜいじゃく)になっている。一方、首都ティンプーで水不足やゴミ処理などの問題が起きている」と課題も指摘し、「都市と地方の調和のある発展が必要」など、同国が目指すべき方向を示した。

 またブータン10+件が目指す「国民総幸福」の理念について副学長は「GNHは単に幸福の総量を指すのではなく、すべての人々が幸福でなければならないという深い意味がある」と強調。GNHの理念にのっとった教育が学校で進められていることなどを紹介した。

 日本側からはブータン10+件での防災対策や高齢者ケアなどについて、研究者が報告した。

毎日新聞 2012年10月10日 地方版
http://mainichi.jp/area/kyoto/news/20121010ddlk26040637000c.html