北朝鮮の人権問題に取り組む韓国の運動家、金永煥(キム・ヨンファン)氏は25日、中国治安当局による取り調べを受けた際に「過酷な扱い」を受けたことを暴露し、国際社会から人権問題で批判を浴びてきた中国に対する風当たりがさらに強まりそうだ。中国はこれまで、韓国政府による問題提起に何の反応も示していない。

■中国側、説明に応じず

 韓国外交通商部(省に相当)によると、金氏は6月11日に韓国の領事と2回目の接見を行った際、不当行為があったことを概略的に訴えた。これを受け、外交通商部は翌12日、中国の張キン森駐韓大使(キンは金を上に一つ、下に二つ並べた字)を呼び、事実関係の確認を要求し「事実と判明した場合には、厳重に抗議する」と伝えた。韓国側はこれまで6回にわたり、中国側に問題を提起したが、中国側は「独自調査の結果、不当な行為はなかった」との回答を繰り返した。外交通商部は金氏の帰国後、23日に不当行為の具体的な内容に関する証言を得て、在韓中国大使館の陳海・臨時代理大使を呼び、再び調査を行うよう要求した。

 しかし、中国側からの回答はまだ得られていない状況だ。外交筋によると、中国側は「証拠はあるのか」という強硬な態度を見せているという。中国政府は人権問題を自国の弱点と考えている。このため、韓国政府筋は、金氏の身体に明らかな証拠がない限り、中国側が「過酷な行為」の存在を正直に認める可能性は低いとみている。中国政府が韓国の国民を114日間にわたり不当に拘禁し、過酷な行為に及んだことは決して軽視できない。このため、外交通商部に対しても、対応が手ぬるいのではないかとの指摘が出ている。


■拷問の存在

 金氏は記者会見後、本紙の電話取材に応じ「拷問の痕跡は残っているか」と質問されたのに対し「最初はあったが、現在は消えた」と答えた。金氏の発言は、拘禁初期には体に跡が残るほどの殴打を受けたことを意味している。

 金氏は「過酷な行為」の具体的な内容については言及しなかったが、「物理的な圧迫や睡眠を取らせないなどの行為はあったか」との問いに「両方ともあった」と答えた。「水責めや電気を使った拷問、性的な拷問などはあったか」という質問には「今は言えないが、(明らかにする)機会があるはずだ」と回答した。

 中国側が示した釈放条件について、金氏は「国家安全省で受けた各種の行為を絶対に口外しないと約束するよう、2カ月にわたり執拗(しつよう)に説得された」と証言した。

 金氏は今年3月29日に身柄を拘束された直後、弁護士や領事による接見を求め、18日間にわたり、黙秘権を行使した。金氏は「中国に敵対的な活動をしたことはなく、過酷な扱いを受ける理由に納得がいかない」と話した。金氏が拘置所を訪れた国家安全省の局長に抗議すると、局長は「上が取り調べろというので仕方がなかった」と答えたという。金氏は拘置所で毎日13時間の労役を強要され、食事は蒸しパン1個だけだった。拘禁場所は、面積25平方メートル(トイレを除く)のスペースに金氏を含む25人が詰め込まれ、風通しが悪く、眠れなかったという。金氏は「取り調べの初期に体重が約10キロほど減ったと思う」と語った。


■「脱北者支援活動を行った」

 金氏は自身の中国国内での活動について、詳細を明かさなかった。「具体的に話せば、(現在中国で活動している)別の人権団体の方々に迷惑をかけることになるためだ」と説明した。一方で「基本的に北朝鮮の人権に関する情報調査、脱北者支援などの活動が主体だった」と説明した。金氏は今回訪中した理由について「長い間縁があって活動してきた方々を激励、支援するためだった」と話した。

 金氏は本紙の電話取材に対し「北朝鮮の住民は圧政と人権弾圧に苦しんでいる。見てみぬふりはできず、どのような形であれ努力することが同じ民族として、また人類の普遍的な義務だ」と訴えた。

 金氏は中国で国家安全危害罪(最高刑は無期懲役)の適用を受け、逮捕されたことに対する個人的な見解として「長期の取り調べを行ったものの、ほかに適用できる罪がなかったか、われわれの活動に潜在的な危険性があると判断したためではないか」と分析した。

アン・ヨンヒョン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 2012/07/26
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