「幸せの国」と呼ばれるヒマラヤの小国、ブータンから来日した2人の留学生が京都伝統工芸大学校(南丹市)で学んでいる。昨年来日した国王が、同校の京都伝統工芸館(中京区)を訪問した縁で実現した。2人は、戸惑いながらも日本での生活を楽しんでいる。

●国王の来訪が縁

 昨年11月、ワンチュク国王とジェツン・ペマ王妃が来日し、京都を訪れた。その際、同大学校の付属施設、京都伝統工芸館に足を運び、日本の工芸品と制作現場を見て感動。「伝統技術をぜひ教えてほしい」と同大学校の新谷秀一理事長(72)に申し出た。
 その後、ブータン政府から留学の依頼があり、同大学校は快諾。4月末、ティンレイ・ノルブさん(25)とトゥクテン・ワンチュクさん(21)が来た。学校に近い寮に暮らしながら、ノルブさんは鋳金(ちゅうきん)や彫金(ちょうきん)などの技能を、ワンチュクさんは木彫りの立体造形を、それぞれ学んでいる。


●日本「幸せな国」

 ブータンで2人は、日本の小学校にあたる初等学校を卒業後、1年間僧院で仏教や宗教儀式を学び、教師や政府官僚を育成するエリート校、王立伝統芸術工芸大学に入学。工芸や仏画などを専攻した。
 ブータンでは小学校から英語教育に力を入れており、2人は英語を話す。日本語はこれからで、来日3カ月で理解できるようになるのが目標だ。
 日本の第一印象について、2人とも声をそろえて「幸せな国」と語った。ワンチュクさんは「先進国として発展しているから。ブータンはどんな製品も輸入に頼っている。いつかは日本のように自国で多くの製品を生産できるようになりたい」と話す。


●自動ドアに驚き

 2人が日本に来て一番驚いたことは「自動ドア」だ。「いままで見たことがなかった。どうやって開ければいいのかと近づいたら勝手に開いたので驚いた」
 仏教文化が根付いているという点で、日本とブータンは似ていると2人は感じている。伝統工芸の教師を目指しているというワンチュクさんは「(両国は)より深い関係を築いてほしい。その一端を担うため、帰国したら日本で得た技術を多くの人に伝えたい」と語る。
 「その前に、僕らがはやく日本語を話せるようにならないと」。ノルブさんが言うと、2人で顔を見合わせて笑った。


◆ブータン◆

 インド北部のヒマラヤ山脈にあり、九州とほぼ同じ広さの国土に約70万人が暮らす。持続的な開発は必要だが、伝統文化や生活様式を犠牲にしてはならないという「国民総幸福(GNH)」の考えを国是としており、「幸せの国」とも呼ばれる。2010年の1人あたりの国民総所得は1870ドル(世銀資料)と日本の約22分の1。

朝日 2012年06月19日
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