◇「プラス思考」と英語、強化

 ブータンの風景は、のどかで牧歌的だが教育理念はしたたかだ。国民総幸福量(GNH)の考え方を徹底してプラス思考を根付かせ、英語の習得で国際競争力も磨く。国民の4割が字を読めないなど途上国共通の課題はあるが、子供たちは学校で夢を膨らませる。
 首都ティンプーから車で8時間。南部・ダガナ県の山中にあるジンチェラ小学校は今年2月、やっと電気が届くようになった。木造平屋建ての校舎は、質素だが掃除が行き届いており、清潔だ。

 ブータンでは就学前(1年)▽小学校(6年)▽前期中学校(2年)▽中期中学校(2年)に通う計11年間が無償教育。後期中学校(2年)は成績優秀者以外は授業料を負担する。義務教育ではないが6歳以上なら何歳でも通え、94%の子が小学校に通っている。

 ジンチェラ小は地域住民の要望で06年に開校。就学前を含む各学年1クラスの計7クラスに、6〜19歳の計235人が在籍する。100人以上が1時間以上の徒歩通学。教師は9人で、うち7人が20代の若さだ。

 授業でもGNHの概念が組み込まれる。例えば引き算の設問。「牛が5頭いて、2頭盗まれました。残りは?」ではなく、「2頭を好きな女性にプレゼントしました」と、肯定感を持たせ「前向き」な雰囲気を作るのだ。

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毎日新聞 2012年05月31日 東京夕刊