中国政府に軟禁されていた盲目の人権活動家、陳光誠さんが自宅を脱出し米政府に保護されていることがわかりました。自宅を今月22日に脱出、およそ600キロ離れた北京まで逃げました。そして仲間の人権活動家、胡佳さんと面会。彼はその後、陳さんは米大使館にいると明かしたのです。米中間の火種となりかねない事態に、米政府は国務省の高官を急きょ、北京に送り込みました。
 「敬愛する温家宝首相、私はやっと逃げ出すことができた」(人権活動家・陳光誠氏)

 こう語るのは、盲目の人権活動家、陳光誠氏。中国当局による不妊手術や中絶の強制を告発し、2006年に拘束され服役。釈放後、山東省の自宅で24時間当局に監視される軟禁状態に置かれていました。そこで陳氏と家族は暴行を受けていたといいます。

 「十数人の男が家に押し入り、妻を地面に押し倒し、その上に布団をかぶせ殴ったり蹴ったりの暴行を数時間続けた」(陳光誠氏)

 1年7か月に及ぶ軟禁状態の後、今月22日、陳氏は単独で脱出に成功。支援者とともに、およそ600キロ離れた北京にたどりつき、現在アメリカ大使館で保護されているとみられます。

 アメリカ大使館に行く前、陳氏は盟友との再会を果たしていました。著名な人権活動家の胡佳氏。胡氏も外国メディアの取材を受けたことなどから実刑判決を受け、去年出所。以来、北京市内で当局の監視下に置かれています。厳しい監視の目をかいくぐって、およそ7年ぶりに再会した2人。目が不自由な陳氏は、自らの壮絶な脱出劇について語ったといいます。

 「陳氏はどうやって夜中に高い塀を登ったのか。その後、200回以上も転倒したことを話した。厳重な包囲網を突破して、支援者と会うまで20時間かかったと話していた」(胡佳氏)

 胡氏は陳氏と再会後、当局に身柄を一時拘束されました。胡氏の妻も、当局から事情聴取に応じるよう求められているといいます。

 そんな中、29日、アメリカのキャンベル国務次官補が急きょ、いつになく厳しい表情で北京入りしました。陳光誠氏の処遇をめぐって、中国側と協議するものとみられています。陳氏は脱出後に撮影されたメッセージでこう語っています。

 「温首相、違法な行為が人民を混乱させている。地方の幹部らが勝手に権力を乱用しているのか。それとも、あなたたち中央政府が指示しているのか。それについて(温首相は)明確な答えを人民に示すべきだ」(陳光誠氏)

 今回の出来事について中国外務省は、「提供できる情報はない」とするのみで、中国のメディアも一切、伝えていません。

TBS 2012年4月30日
http://news.tbs.co.jp/newseye/