その2:「軍では何が起きているのか」の巻(1)

 今回は軍では何が起きているのかを見てみよう。
 実は軍の中で、「政変」とも言うべき動きが起きていた。いや、「軍変」と言った方がいいのだろうか。

 軍――。
 言うまでもなく、中国人民解放軍のことだ。
 中国人民解放軍は中国共産党中央(中共中央)軍事委員会(主席:胡錦濤総書記)と中華人民共和国(国家)中央軍事委員会(主席:胡錦濤国家主席)の管轄下にある。
 この二つの軍事委員会は相似形だ。
 なぜ同じものが「ダブリ」のような形で二つあるのかというと、軍は「中国共産党の軍」であると同時に、「人民の軍」「国家の軍」であるからだ。両方を総称して「中央軍事委員会」と呼ぶ。

 「中央軍事委員会」と言った場合、同じ機関を指すものの、実質上の命令指揮権を持っているのは中共中央軍事委員会だ。第4回で図示したように中共中央軍事委員会は中共中央委員会に属しているので、その総書記である胡錦濤が属する「チャイナ・ナイン」の決議に従わなければならない。

 ここでも「チャイナ・ナイン」が出てくる。ただし、胡錦濤総書記は中共中央軍事委員会主席であるため、「チャイナ・ナイン」とは同等でない特別の権限を持つ。中国は建国の時から、「政権は銃口から生まれる」と軍を位置づけている。軍の実権を握っているかどうかによって、国家の掌握度が決まってくる。

劉少奇の息子、劉源が谷俊山を更迭

 2012年1月27日、中国人民解放軍「総后勤(後方勤務)部」の副部長であった谷俊山が更迭された。理由は汚職。

 更迭を指示したのは総后勤部の政治委員・劉源(りゅう・げん)である。

 中国人民解放軍は、中央軍事委員会の下に次の四つの総部(本部)を持つ。カッコ内の役職がある。

総参謀長
総政治部(主任)
総后(後)勤部(部長、政治委員)
総装備部(部長、政治委員)

 劉源は上将で、中将である谷俊山より身分が上だ。
 どの部でも、位は

将官:上将、中将、少将
校官:大校、上校、中校、少校
尉官:上尉、中尉、少尉

 となっている。

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日経ビジネス 2012年4月日
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