近日、世界銀行と中国国務院発展研究センターは共同で、経済見通し報告書をまとめました。報告書は、中国が国有企業の大規模改革を行わないと、2030年には深刻な経済危機に陥ると警告しています。

27日に発表した報告書“2030年の中国”は、中国が深層改革を行わないと経済危機に直面する恐れがあると指摘。

一方、ウォールストリートジャーナルは、この報告書は、胡錦涛主導の経済発展モデルへの挑戦であると報道。

報道は、報告書の作成に関った6人の専門家の話を引用。それによると、報告書では中国の政治上敏感な問題とされる経済問題について問題点を提起し、その目的は次世代指導者に影響を与えるためだそうです。報告書はまた、過去10年間の胡錦涛主席主導の中国の経済発展モデルに、疑問を提起。

一方、アメリカ・サウスカロライナ大学の謝田教授は、報告書が共産党当局にもたらす影響は限られていると指摘します。

米サウスカロライナ大学 謝田教授
「中共のように頑固な政権にとって、専制の路線を堅持する、政権にとって実質的な圧力、政治または経済上の圧力があってはじめて、ある程度変化が起きます。しかし 西側諸国、世銀や国際機構も含めて、中共に真の圧力を加える、意思はないようです。なので 世銀が中国経済の敏感な問題に触れる事ができるかどうか、中共指導者に影響を与える事ができるかどうかは疑問です」

報告書は、中国の国有企業は金融、エネルギー資源、インフラ、製造業、不動産、通信、映画産業などあらゆる分野を独占する、世界唯一の“国家独占集団”であると指摘。

中国の国有企業の雇用は労働人口の9割を占め、GDPはほぼ半分を占めます。銀行の低金利融資は、ほとんど国有企業に流れ込み、実質は政府による補助であると批判され、これも民営企業との競争に不公平をもたらす原因の一つです。更には、地方政府も国有企業と手を組み、税収ではなく、土地売買で利益を得ているのです。

財政コラムニスト廖仕明さんは、中国経済はここ10年来後退を続け、国有企業だけが潤い、民営企業は衰退の途を辿っていると分析します。つまり、優遇政策の下、大量の資源や資金を集めた国有企業が、民営企業の生存空間を押しつぶしているだといいます。

また、国有企業とは政府所有企業ですが、中国では商業市場の運営方法が用いられ、結果的には政府官僚と企業が結託する現在の“縁故資本主義”へと変貌したと指摘します。

財形コラムニスト 廖仕明さん
「中国の官僚と企業のボスは密接な利益共同体を形成しているため、引き離す事は至難です。このような問題の提起は経済発展の問題だけでなく、中国の政治体制に触れています。中国社会の権力の来源です」

また、中国では民営企業が受けられる銀行融資は、全体の融資額の2割に過ぎないそうです。民営企業は、資金や政策面でのバックアップをほとんど得られないと指摘します。

財形コラムニスト 廖仕明さん
「正に政府の官僚が言い方を変えれば、つまり 立法者 法律執行者 監督者 企業経営者といわゆる学術専門家が一つの利益共同体を形成し、この利益共同体の利益を保護しています。この利益共同体は中国共産党の権力に触れ、彼ら一人ひとりの官僚の富に関りを持ちます。なので 全く動かす事ができません。一つを動かすだけで、全部を動かす事になります」

謝教授は、10年前からささやかれている中国経済の破綻は、ここ2年、ますます色濃くなり、多くの専門家も気づき始めていると述べます。廖さんも、これは単なる経済問題ではなく、共産党体制が変わらない限り、どんな助言であっても無意味だと指摘します。

新唐人日本 2012年2月29日
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