【ニューデリー時事】チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世(75)の政治上の引退を受け、チベット亡命政府を率いる新首相に8月に就任するロブサン・センゲ氏(43)が31日までに、亡命政府のあるインド北部ダラムサラで時事通信のインタビューに応じた。センゲ氏は、首相就任後の最優先事項を「チベットに自由を取り戻し、法王(ダライ・ラマ)をラサに帰還させることだ」とし、その実現に向けて、中国政府との対話を粘り強く求めていく考えを強調した。
 亡命政府と中国の対話は、昨年1月を最後に途絶えている。センゲ氏は「われわれは常に対話のために特使を派遣する用意がある」とした上で、「中国の強硬派がチベット問題解決のための真剣な交渉に入ろうとせず、対話が停滞した」と批判した。次回交渉のめどは立っていないという。

 ダライ・ラマは対中交渉で、チベットの独立ではなく、自治拡大を求める「中道路線」を採用した。センゲ氏は独立を求める急進派「チベット青年会議」に所属した経験を持つが、「中道路線が私の立つべき基盤だ」と述べ、中道路線を継承する姿勢を表明。独立は「亡命政府の究極目標としてはある」ものの、当面は望まないとした。

 中国は亡命政府を「違法な組織」として、センゲ新政権を相手にしない考えを示している。さらに共産党機関紙からは「テロリスト」と記事で形容されたが、同氏は「非常に不幸なこと。中国は亡命政府のような民主主義を自分たちが持っていないことが気掛かりなだけだ」と一蹴した。

 センゲ氏は日本人の精神にチベット人が見習う点が大きいと指摘。「東日本大震災で原子力事故が起きた際も、苦難からの回復力、忍耐力を見せたことは教訓になった」と述べた。

時事ドットコム 2011/05/31
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2011053100482