中国の国土は、面積の41.7%に相当する約4億ヘクタールが草原だ。しかし、9割では質の低下である「退化」が進んでいるという。専門家は、「計画性や科学性のない政策が繰り返されたてきたことが大きな問題」と指摘。生態の法則を守らねば、草原の保護はおぼつかないという。中国新聞社が報じた。
  中国農業大学の王坤教授によると、中国の草原面積は森林と耕作地の合計よりも大きいが、全草原の9割で質の劣化を意味する「退化現象」が進行している。すぐにでも砂漠などの不毛の地になっておかしくない「深刻な退化」が発生している草原は、全体の50%だ。王教授は「恐るべき事態」と表現した。

  草原の「退化現象」が始まったのは1960年代だった。深刻な食料難の解決のため、草原の開墾に力を入れたが、降水量の事前調査なども行わなかったので、ほとんどが失敗。後には荒地だけが残ることになった。王教授は「わが国の政策決定には計画性も科学性もなく、一部の人間の個人的な考えで行われている」と、厳しく批判した。

  草原の退化は、生態系の破壊を意味する。草原に多くいたオオカミやレイヨウも数を減らした。植物の種類も急速に減少し、「草原の生産力」は大幅に低下した。

  内モンゴル師範大学地理学院のハイシャン教授によると、モンゴル牧畜民の常識に反する「草原の保護策」で、草原の退化が発生した。牧畜民は経験から、「家畜が食べても草は減らない。家畜が踏むことで草がなくなる」ことを熟知しているが、「家畜が草を食べ過ぎて草原が傷んだ」との理由で、柵を作っての家畜の囲い込みが推進された。結果として、家畜に集中的に踏み荒らされた場所から草が消え、それが周辺に広がっていったという。

  王教授も、草原地帯では家畜と草の共存が成立していたと主張。草原を保護するためには、生態の法則をよく研究して、尊重することが必要であり、牧畜民も保護活動に加わってもらい、共通の認識を得る必要があるという。
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サーチナ 2011.4.22
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2011&d=0422&f=national_0422_213.shtml