中国の外交方針はこのごろ、大きな方針転換が見られた。安全保障、経済、領土など多くの分野で欧米や日本などの主要国と対決姿勢を強めると同時に、北朝鮮やミャンマーなどの独裁国家を支援し擁護する立場を一層鮮明にしている。軍や保守派の支持を受けた習近平(しゅうきんぺい)国家副主席(57)の台頭により、共産党内部の権力闘争が激化し、国際社会との協調を重視してきた改革派の温家宝(おんかほう)首相(68)は外交の主導権を失いつつあることが背景にあるとみられる。保革抗争の影響はついに外交分野に現れた。


温首相「引退」に言及

 11月中旬、温家宝首相が訪問先のマカオで行った発言は中国国内外で大きな波紋を呼んだ。14日早朝、マカオ市内の公園で朝の体操をしている市民たちといっしょに太極拳に興じた温首相はマスメディアの前で「またいっしょに太極拳をやりたいですね。私の引退後、みんなで北京に遊びに来てください」と市民たちに声をかけたという。2008年3月に再選された温首相の任期は2013年3月までで、5年ある任期を約半分も残している時点で「引退」に言及したことは周囲を驚かせた。中国に限らず、どこの国でも指導者が「引退」を周りに意識させた瞬間から、求心力の低下が始まるといわれる。香港紙などでは「権力闘争に敗れた温首相が意気消沈した裏付けだ」とこの発言を分析している。

 温首相は今年8月末に訪れた深●(=土へんに川)(しんせん)市で「政治改革を断行しなければ、中国は経済改革を通じて達成した実績を失うとともに、近代化という目標を実現できない恐れがある」と演説したことが注目された。その後、米国のCNNテレビのインタビューでも、言論統制の緩和の必要性などを言及した。党幹部の腐敗が深刻化し、国民の不満が高まっている現状を解決する方法として、政治改革の断行という自らの信念を全面的に打ち出した。
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産経新聞 2010.12.5
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言論の自由封じる「見えない邪悪な手」 黙殺される温首相の発言 改革派長老らが公開書簡