【上海=河崎真澄】中国チベット自治区で国有資本によるチベット航空が設立され、来年半ばの就航に向けて欧州エアバスの小型旅客機「A319」3機を発注したことが明らかになった。中国政府は、鉄道に加え航空路線も拡大させ、チベットへのヒト、カネ、モノの流入を促し、チベット族の不満の底流にある経済格差の解消につなげたい考えだ。同時に軍民共用空港の整備を進めており、支配体制強化を図っている。

 中国英字紙チャイナ・デーリーなどによると、今回のエアバス発注を含め、同航空は今後5年以内に保有機材を20機までに増やす計画だ。北京や上海、四川省成都など国内主要都市を結ぶ路線を開設する。

 同航空は今年3月に航空局から認可を受けた。資本金は2億8000万元(約35億円)。国有企業のチベット自治区投資有限公司が最大株主で51%の株式を保有する。

 新華社電によると、同自治区のラサ、シガツェなど5空港で、中国政府は2006年からの第11次5カ年計画で総額34億9800万元(約440億円)を投じ、軍民共用へ整備を進めている。来年からの第12次5カ年計画では、さらに64億8500万元(約817億円)を投入する予定だ。

 チベットでの交通インフラ整備では、06年7月にラサと青海省西寧を結ぶ青蔵鉄道が全面開通したほか、昨年9月にはラサと成都を結ぶ川蔵鉄道も着工した。

 同自治区内の治安は成都軍区が管轄する。空路や鉄路の整備で軍はチベットでの暴動や国境紛争などが発生した場合、迅速に部隊を送り込む機動力を従来よりも飛躍的に高めている。08年3月に起きたチベット騒乱などが交通インフラ整備の背景にありそうだ。

産経新聞 2010.8.24
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