【北京・成沢健一】中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は23日、死刑適用罪名を68種類から13種類削減することなどを盛り込んだ刑法改正案の審議に入った。「死刑執行件数が世界で最も多い」との国際的な批判をかわす狙いがあるとみられるが、削減対象の罪名は現在でも死刑が執行されるケースは極めて少ないとの指摘もあり、影響は限定的なものになりそうだ。

 新華社通信などによると、削減対象となるのは密輸や偽造など経済犯罪が中心で、窃盗、文化財盗掘も対象から外す方針。国民の不満が大きい汚職や麻薬関連の犯罪は死刑適用対象から除外されない。常務委法制工作員会の責任者は「中国の刑罰は運用面で死刑偏重という問題が存在している。一部の経済犯罪は死刑を適用しなくても、社会の安定に悪影響を及ぼすことはない」と話した。

 また、改正案では75歳以上の高齢者に死刑を適用せず、有期懲役の上限を現行の20年から25年に引き上げる。執行猶予付きの死刑判決についても、殺人や強盗などの暴力犯罪は2年後に無期または20年の懲役に減刑した後は、再度の減刑を認めないとしている。中国メディアは、79年に制定された現行刑法で死刑の適用罪名が削減されるのは初めてで、07年から続く死刑制度改革の進展と伝えている。

 改正案では新たに酒酔いや暴走による危険運転、意図的な給与未払い、臓器売買なども刑法犯として処罰対象とすることを盛り込んだ。飲酒運転はこれまで道路交通安全法の取り締まり対象となっていたが、拘留や罰金などの軽い刑しか定められていなかった。具体的な刑罰は明らかにされていないが、罪状によっては懲役刑が科される。

 一方、給与未払いによる労働者と経営者のトラブルは全国で相次いでおり、悪質な給与未払いを刑法犯として扱うことで、労働者の権利を守る狙いがあるとみられる。改正案では、支払い能力がありながら財産移転や逃避などで労働報酬を支払わなかった場合、3年以下の懲役とし、結果が重大な場合は3年以上7年以下の懲役としている。

 臓器売買について改正案は5年以下の懲役とし、罪状が重大な場合は5年以上の懲役と規定している。本人や親族の同意を得ずに臓器を摘出する行為も処罰対象とした。07年に施行した臓器移植条例は臓器売買を禁止しているが、ドナー不足からその後も臓器売買が広がっており、臓器売買仲介に絡み日本人が摘発されたケースもあった

毎日新聞 2010.8.23
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