【北京=川越一】中国メディアによると、中国公安省は28日までに、各地の関係機関に対し、売春の疑いで逮捕した女性らを街中で“さらし者”にする悪習を禁止する通達を出した。インターネット上で沸騰している「人権無視」との批判に敏感に反応した形だ。

 中国全土では6月下旬から、売春を取り締まるキャンペーンが展開されている。ひとたび、当局から号令がかかれば極端に走るのが中国の常。今回も、11月の広州アジア大会を前に、風紀の改善をうたう広東省東莞市の公安当局が、売春で逮捕した女性に手錠をかけ、素足で街中を歩かせている写真を公開した。

 縄でつながれた赤いシャツ姿の女性の写真は、インターネット上で転載が繰り返され、多くの人々が目にすることになった。当局が公開した写真は、顔にモザイクをかけるといった配慮もなく、「人権侵害」との批判が一気に噴出した。湖北省武漢市の当局が、売春で逮捕した女性の実名や年齢、罪状を告示したことも、問題視されている。

 中国でも法律上は、犯罪者の“市中引き回し”は禁止されている。しかし、実際は後を絶たないのが現実で、昨年10月には安徽省宿州市で、強盗容疑で逮捕された男性3人がトラックの荷台に乗せられ、市内を引き回されたことが発覚。同じ時期、河南省鄭州市では、風俗店の摘発で逮捕された女性の全裸写真が当局によって公開され、物議をかもした。

 今回もインターネット上には、「家庭環境がよければ売春婦にはなっていない。彼女たちも人間であり、尊厳がある」「死刑囚でも市中引き回しなどされないのに、彼女たちは死刑囚よりも憎いというのか」など、“弱者”を辱めて、功績を誇示する当局のやり方に、批判が集まっている。

 公安省の出した通達では、市中引き回しなど人権を無視する行為を禁止している。今後、同様の問題が発生した場合は、現地の公安当局トップの責任を追及するとしている。

産経新聞 2010.7.28
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