開幕から1カ月。武装警察部隊の大量投入で、上海万博はこのところ入場者のどなり合いや小競り合いなど、混乱がだいぶ減った。一方、地元で報じられぬところで事件は起きていた。

 中国当局に日本からの帰国を拒否され、成田空港で抗議活動したことで知られる上海の人権活動家、馮正虎氏が万博会場を訪れたところ、公安当局に身柄を拘束され3日間にわたって監禁される問題があった。

 馮氏がツイッターなどで明らかにしたが、馮氏は万博会場の用地接収など、当局に強制的に立ち退かされた住民を支援しており、公安当局は会場での抗議活動を警戒したとみられる。

 着ていたTシャツのデザインをとがめられ、警備員事務所に1時間近く足止めされた入場者もいる。台湾の作家でテレビコメンテーターの朱学恒氏だ。台湾のテレビによると、警備員は朱氏の「阿宅反抗軍」と書かれたTシャツを指し「何に対する反抗軍だ?」と厳しく詰め寄ったという。

 朱氏はオタク文化の“神様”として台湾の若者に人気がある。「阿宅」は日本語の「オタク」の意。「反抗軍」には何ら軍事的、武力的な意味はない。どう説明しても中国人警備員は理解できず、朱氏は論争をあきらめて無地のシャツに着替えて入場したという。

 当局の過剰反応ぶりには驚かされるが、万博でどんなに国際性を対外宣伝しようとも、ここは言論の自由も表現の自由もない共産国家だとの現実を思い知らされる。(河崎真澄)

産経新聞 2010.5.31
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