【台北=山本勲】米国政府による台湾への武器売却決定が、米台の準“軍事同盟”関係の不変を中台双方に印象づける政治効果は少なくない。台湾ではオバマ米政権と馬英九政権の対中傾斜に対し、独立派を中心に懸念が強まっていたが、一定の沈静効果が期待できる。

 台湾国防部は30日、米政府決定への「歓迎と感謝」を表明。米国が「(台湾の安全維持に重大な関心を示した)台湾関係法に基づき、引き続き防衛に必要な物資を提供してくれることは台湾海峡の平和と安定に有益である」とした。

 2008年5月の馬英九政権発足以来、台湾では二つの懸念が指摘されてきた。馬政権の対中接近が対米関係を損なわないか、オバマ政権の対中融和姿勢が米国の台湾軽視につながらないかだ。米台関係は昨秋来の米国産牛肉の輸入解禁問題でも摩擦が強まっている。こうした中での武器売却計画の決定は、馬政権や台湾の民心安定にプラス効果を及ぼすだろう。

 中国は強く反発しているが、米国が売却する武器は地対空誘導弾パトリオット(PAC3)など防御兵器主体だ。中国はすでに台湾を射程に収めたミサイルを1300基以上配備しており、今回売却される114基では到底防御は不十分だ。

 台湾国防部が戦闘能力を強化するために求めているF16戦闘機やディーゼル潜水艦の売却は見送った。しかし、中台の経済・政治協定締結などを通じて統一への足場を固めようとしていた中国の胡錦濤政権としては、オバマ政権に出鼻をくじかれた感もある。

産経新聞 2010.1.30
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