【北京=佐伯聡士】中国とパキスタンが戦略的関係を深めている。

 両国の共同生産による新型軽戦闘機「梟竜(きょうりゅう)」(パキスタン名JF17)の第1号機が完成。パキスタン南西部のグワダル港と中国西部・新疆ウイグル自治区の拠点都市カシュガルを結ぶ鉄道の建設に向けた協議も本格化した。緊密さを増す両国関係に、双方と緊張の種を抱えるインドで警戒感が広がっている。

 新型軽戦闘機は、イスラマバード北西約60キロにある空軍施設で生産される。施設は1972年、中国から輸入した航空機の修理工場として始まったが、92年以来、両国による戦闘機の共同生産、開発のパキスタン側の拠点となってきた。

 新華社電によると、現地で11月23日、パキスタン空軍幹部、中国の羅照輝・駐パキスタン大使ら1000人余りが出席して、完成式典が開かれ、ギラニ・パキスタン首相が「梟竜プロジェクトは画期的だ。中国が我が国空軍のニーズを満たす戦闘機を設計してくれた」と称賛。羅大使は「全方位の協力がさらに推進されるよう希望する」と応じた。

 中国紙などによると、パキスタン空軍は、同施設で量産した梟竜を2015年までに少なくとも150機保有する計画だ。パキスタンで作った梟竜は、中東など8か国にも輸出される可能性があるという。

 中国メディアは11月、アラビア海に面したグワダル港とカシュガルを結ぶ鉄道と石油パイプラインを建設する計画について両国の間で協議が進んでいると伝えた。パイプラインが開通すれば、中国にとって、マラッカ海峡を経由せずに中東産石油を調達できるルートとなり、エネルギー安全保障上も大きな意味を持つ。

 グワダル港はもともと中国が中心になって整備した。ペルシャ湾の出口をにらむ戦略拠点で、中国側には「将来的に海軍基地として利用する思惑がある」(中国筋)とされる。

 ◆梟竜=1992年から、中国の「殲7」戦闘機の技術を基礎に、中パ両国の共同開発が始まった。2003年に初飛行に成功。空中戦能力は米国のF16A/B戦闘機に匹敵し、対地攻撃能力は劣るとされる。航続距離1450キロで最大速度はマッハ1・8。これまでは中国のみで生産し、パキスタンにも何機か輸出されている。今回のパキスタンでの共同生産は、中パ双方が費用を負担し、技術は中国側が提供した。

 読売新聞 2009年11月30日
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