【北京・浦松丈二】中国の次世代指導者が11月以降、相次いで訪日する見込みだ。胡錦濤国家主席(66)の後継候補である習近平国家副主席(56)=政治局常務委員=の訪日が12月初めの日程で最終調整されているほか、同じ「第5世代」で2012年の第18回中国共産党大会での最高指導部入りが有力視される政治局委員の訪日も予定されている。訪日ラッシュは、中国指導部が目指す日本との戦略的互恵関係強化の一環とみられている。

 日中関係筋によると、習氏の訪日は「世代を超えた友好関係の演出」に力点が置かれる。立場が異なる東シナ海ガス田開発や中国製冷凍ギョーザによる中毒事件など個別問題は議論されない見通しだ。習氏の夫人で国民的歌手の彭麗媛(ほう・れいえん)さん(46)も11月8日から東京や札幌で公演を行う。

 胡主席も副主席時代の98年に訪日し、日本の政財界に次期リーダーとして披露されており、習氏の訪日も前例を踏襲したものになりそうだ。だが、習氏は9月の党中央委員会総会で一時有力視された中央軍事委員会副主席任命が先送りされ、98年当時の胡氏ほど権力基盤を固めていないとされる。調整窓口の中国政府幹部も日本側との協議で「(胡主席ではない)もう一人の国家指導者の訪日」と名指しを避け、不調に終わった場合に備えて慎重な言い方に終始しているという。

 一方、胡主席直系で広東省トップの汪洋党委書記(54)=政治局委員=も11月3〜8日の日程で訪日する。最高指導部を形成する政治局常務委員の次期候補として汪氏のライバルと目される重慶市トップの薄煕来(はく・きらい)党委書記(60)=同=も年内訪日で調整中だ。

毎日新聞 2009.10.31
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 中国の政治家にとって、歴史認識や領土など敏感な問題を抱える日本への訪問は、リスクを伴うものの存在感をアピールする機会でもある。日本政府側も「日本を理解してもらう格好の機会」(外交関係者)ととらえ、次世代指導者受け入れに前向きな姿勢だ。