≪外国に出ている価値なし≫  

日本の特派員の顔も関心も、肝心の対象たる中国よりは、もっぱら日本の方に向いている。相手側の内側に食いこもうという努力よりは、一ばん安易なやり方で、本国に打電すれば取り上げてもらえそうな日本人の談話記事ばかりを取材している。いや、ぼくの直接経験によれば、彼らのうちには、日本向けのニュースをでっち上げることさえやってのけるご仁さえあるのだ。

もう二月以上前に起きた、いわゆる衛藤発言、本欄の筆者でもある衛藤瀋吉氏の故蒋総統についての私的な感想を、あたかも公式発言であるがごとくに日本に打電し、ことさらに問題をもり上げようとまでしたいきさつは、改めてふれるに当るまい。その場に居合せたぼくらが、北京では気もつかず、帰国して日本の新聞で大きな記事をみて、びっくりするという始末であった。

もっぱら日本向けのでっち上げ、スタンドプレイであり、その証拠にこの「事件」、国際的反響などただの一つも生じなかった。せっかく外国に出ていながら、その眼はひたすら日本の方にばかり向けられている。たまたま「文芸春秋」に徳岡孝夫氏の「サイゴン特派員は何を報道したか」という内幕話がのっており、自身特派員であった徳岡氏が、忌憚のない日本人特派員批判を行っているのが面白い。
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産経新聞 2009年5月31日
http://sankei.jp.msn.com/world/china/090531/chn0905310904003-n4.htm