公表された「白書」は、経済成長をバックに世界の大国への道を歩む中国が、「暴乱鎮圧」の名の下で、国民を殺害した十字架の重さを改めて示したものといえる。27日を発表日に選んだのは、20年前のこの日、北京の学生らが3万人以上の大規模デモを行い、弾圧に至る運動全体の転機を迎えたことを踏まえたものだ。王丹氏らは、この日を「民主の日」として記念するようアピールした。

「白書」は、全体でわずか43ページに過ぎない。体裁の上ではパンフレットと呼ぶべきものだ。弾圧にいたる中国指導部の暗闘を克明に描いた「天安門文書」(邦題)のような大冊と異なり、事件の真相を検証する新たな事実やデータは、ほとんど含まれていない。

むしろ、「白書」の主眼は、事件の再評価を拒み、経済実力を背景に大国への道を歩もうとする中国当局に挑み、事件の風化を拒むことに置かれている。

腐敗の排除や言論の自由を求めた運動の本質が「非暴力」だったことは、この「白書」が訴える通りだ。国民の間に広がった民主化の要求に対し、完全武装の正規軍が銃弾で応えた事実は、「白書」が訴える通り、現代史上まれな暴挙にほかならない。
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産経新聞 2009年4月28日
http://sankei.jp.msn.com/world/china/090428/chn0904282310005-n1.htm