ベトナムの旅行雑誌「TIN TUC DU LICH」が、中国を批判する記事を掲載したとしてベトナム政府から3カ月の停刊処分を受けた。

中国紙、国際先駆導報(電子版)などによると、同誌は、旧正月に発行した“新年特別号”で、中越間の領土問題に触れた。記事では、昨年、首都ハノイとホーチミンで、中国政府の南シナ海政策に対する抗議デモの参加者を「勇気ある精神」と称賛した。

「民衆の愛国心を鼓舞することが悪いというのか」とする同誌に対し、べトナムの情報通信省は今月中旬、「虚偽の情報を伝えて暴力を扇動し、中越間の憎しみを誘発しようとした」などと批判し、重大な新聞法違反を理由に3カ月の停刊を決めた。

1979年の中越戦争で悪化した両国関係は一応修復されているが、南シナ海の南沙(ベトナム名チュオンサ)、西沙(同ホアンサ)両諸島の領有権争いは解決に至っていない。同誌は、ベトナム南部の経済成長のカギとなるのは南シナ海の資源で、近年、多数のベトナム南部出身者が国家権力の中枢に入り込んでいると指摘した。

ベトナムにとって中国は米国と並ぶ最大の貿易相手国である。ベトナム国籍の華人研究者は「ベトナム政府は国内で反中国的な状況が出現することを望んでいない。そのような状況になればベトナムに不利だからだ」と述べ、中国を過剰に刺激したくないベトナム政府の事情を説明した。

今回の停刊事件は同時に、ベトナムで報道規制が再び強化される可能性を表面化させた。ベトナム政府は一時期、メディアへの規制を緩和し、汚職の告発を奨励した。しかし、昨年5月、官庁汚職を暴いた記者2人が自由と民主の権利を侵害したとして逮捕され、禁固2年の実刑判決を受けるなど、政府のメディア対応に変化がみえる。英BBC(電子版)によると、情報通信省は経営改善を理由に新聞編集の主導権再編を検討する方針という。

産経新聞 2009年4月28日
http://sankei.jp.msn.com/world/china/090428/chn0904281823000-n1.htm